最強スパダリ吸血鬼が私を運命の人だと言って離してくれない!
最初は断ろうと思った。



私は可愛いものとは無縁だから。



でも虹香ちゃんに"可愛くする"と言われてお願いしてみようかなって思った。




こんな私でも可愛くなれるのかなって。



それにしても、人に髪の毛を触られるの緊張するなぁ……




虹香ちゃんが鏡越しに私の髪を指先で器用にまとめていく。




「ひかりちゃんは髪の毛が綺麗だから、ちょっとまとめるだけで雰囲気が変わるんだよ」



「そ、そうかな……」



虹香ちゃんは、私の短めの髪を指先で軽くつまんで、くるくるとねじった。



「ボブって長さ的にできること少ないけど、逆にアレンジするとすごく映えるんだよ。お姉ちゃんが言ってたの」



そう言いながら、虹香ちゃんは耳の上あたりの毛を細く三つ編みにする。



鏡に映る自分の姿に、思わず目を丸くしてしまった。




「えっ……なにこれ、いつもと違うかも」





――ほんとに、私でも“可愛い”に近づいてるのかな。





鏡の中の私は、普段よりずっと女の子らしく見えた。




「ふふっもっと自信持っていいんだよ、ひかりちゃん」


「ありがとう……」


「まだだよ、ひかりちゃん。体育祭の時にもらったヘアピンあるでしょ? コウモリモチーフの」


「えっあ、あるよ」



「つけてみよ? 絶対ひかりちゃんに似合うよ!」




キラキラした瞳で見つめられ、恐る恐るヘアピンをさっき三つ編みしてくれたところにとめる。


「どう……かな?」



「わぁっ! すっごく可愛いっ!」





「へへ、ありがとう」




「どういたしまして。――ちょっと飲み物取ってくるね」





そう言って虹香ちゃんは飲み物のコーナーへと向かった





一人残された私は、少し落ち着かない気分で鏡をのぞきこんだ。



< 31 / 46 >

この作品をシェア

pagetop