歴代最強のオヒメサマ

実力



その日の放課後はいつも通り、智哉の運転する黒い車に乗り込んで倉庫へと向かう途中だった。


「おかえりなさい、翡翠さん」


今日は珍しく車内には椿が乗っていて、何やらカタカタとPCを弄っていた。


「………少し、お耳に入れたいことが」


ふいに手を止めた椿が智哉には聞こえないようにこそりと耳打ちをする。


「───例の件、順調に進んでいます」
「そう。ありがとう」


ゆるりと口角が無意識に弧を描く。

背もたれに深く腰掛けて、まぶたを閉じる。



水月の次期幹部にしてハッカーでもある椿は、ふと浮かんだわたしのとある考えに賛成してくれて協力してくれている。


千佳や智哉にも協力を仰ごうと思ったが、椿に止められたためふたりだけで進めている。



………翔真には怒られるだろうから絶対言わないけど。
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