十六夜月のラブレター
気遣ってくれる優しさが嬉しい。

「あんな態度をしちゃった言い訳がしたいから。でも暗い話だから聞きたくないかも」

「聞かせてよ、言い訳」

入谷さんが包み込むように見つめてくれている。

「私、雪見と顔は同じだけど不愛想だから全然可愛がられなくて。雪見みたいに天使のように振舞えなくて。いつもみんなに必要とされるのは雪見。それでいつしか雪見と間違えられることが辛いことになってしまって」

「俺、君が一番傷付くこと言ったんだね。ごめん」

「違うんです、これは私の中の問題だから。あの、入谷さんと雪見はどういう関係なんですか?」

「え? ああ、中学生の時友達だったんだ」

「今は連絡とってないんですよね? 私、入谷さんが雪見と会えるようセッティングします。これでもお姉ちゃんですから」

喜んでくれると思ったのに入谷さんは無言になってしまった。

また余計なこと言った?

「あ、それと、私が入谷さんのことを憶えてないのも当然のことだったので、二人で会うのもこれで最後にしましょう」

するとなぜか入谷さんは険しい表情で私を見つめて言った。

「あのさ、ひとつ肝心なことを忘れてるよ。俺が雪見ちゃんを知ってるってことは、月見ちゃんのことも知ってるってことだから」

「え?」

「本当は謝らなきゃいけないのは俺なんだ。なぜならあの夜俺は、君をわざと雪見ちゃんって呼んだんだから」

「なんでですか!?」

「俺のこと全然思い出してくれないから。本当は憶えてるのに憶えてないフリしてるのかとか。だからどんな反応するか試したんだ。君がそんな想いを抱えてたなんて全然知らなかったから」
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