あなたの家族になりたい
 瑞希さんは舌打ちをして扉に鍵とチェーンをかけた。

 拭いても拭いても涙が止まらなくて、瑞希さんに止められる。
 そのあと、瑞希さんは外に出てしまい、私は自分の部屋でペンギンを抱えて横になった。

 頭がぐちゃぐちゃで、何も考えたくない。

 ……母に責め立てられたことも、瑞希さんに、行かないでと言えない情けない自分のことも。

 ウトウトして、気がついたら外が暗くなっていた。

 瑞希さんはまだ帰っていない。

 帰ってこなかったらどうしよう。

 あんな母がいる私に、泣いてばかりの私に、愛想を尽かしてしまったらどうしよう。


 スマホを見たら、母から大量のメッセージが来ていた。

 どうしよう……もう何もしたくない。

 母からの通知をオフにして、ついでに自分のアイコンをデフォルトのものから瑞希さんにもらったペンギンのぬいぐるみの写真にしておいた。

 ……今さらで、ほんのささやかでも、自己主張をしておきたかった。


 とにかくシャワーを浴びる。脱衣所を出たところでスマホが震えて、瑞希さんから『帰る』とだけメッセージが送られてきた。

 ……瑞希さんのアイコンが、バレンタインに私が贈ったチョコの家になっていた。

 しかも家を持つ私の手も入っている。

 いつからだったんだろう。

 スマホでやりとりをほとんどしないから、気づかなかった。

 泣きたい気持ちのまま玄関で待っていると、十分ほどして鍵ががちゃがちゃと揺れた。

 ふらふらの瑞希さんを須藤さんが抱えて入ってくる。
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