【書籍化】聖騎士様と始める異世界旅行事業 ~旅行会社の会社員でしたが異世界に転生したので起業します~
――コン、コン。
「……ユリア、いる?」
皆が寝静まった夜。セシリーナは単身でユリアの部屋を訪れていた。さきほどの夕食時に彼女と約束をしていたのだ。今日の夜は憧れの女子会ならぬパジャマパーティをしようと。
セシリーナが廊下に佇んで返事を待っていると、こそこそと部屋の扉が開かれてユリアが顔を覗かせた。
「まあ! ようこそいらっしゃいましたわ。どうぞお入りになって」
「お邪魔します」
「ふふ、女の子だけで夜通しお話しできるなんて旅行の醍醐味ですわよね!」
ユリアがうきうきでセシリーナを部屋に招き入れる。室内には村の露店で売っていた珍しい果実や焼き菓子が用意されていた。よくよく見れば果実酒まで準備されている。
「……ユリア、もしかして飲む気?」
「もちろんですわぁ! お酒は淑女の嗜みですもの」
「そ、そうかなあ」
自分も彼女も成人しているからお酒はウェルカム。なのだけれど、羽目を外さないようにしなければ。ユリアは日ごろできない自由を満喫する気満々のようだ。
そうして始まったパジャマパーティは――果実酒の飲みやすさに後押しされて二人ともあっという間に酔っぱらってしまった。女子同士の他愛のないおしゃべりと笑い声が絶えまなく続く。
女子会と言えば恋愛話とばかりに、ユリアが呂律の回らない言葉で聞く。
「それでセシィ、今日は無礼講ですのれお聞きしたいのれすが」
「なんなりと」
「貴女はアベルハルト様とケルヴィン様とヒース様、どちらの殿方がお好きなんですの?」
「はえっ!?」
いきなりの話題に変な声が出てしまった。一気に酔いが醒めそうになる。
セシリーナはしばし考えてから首を横に振る。
「……今は、誰かとどうなりたいとかはないかなぁ」
「あらぁ、残念」
「そうというのも、今でこそ旅行事業があるから一緒にいられるけれど、それがなかったら一緒にいることは叶わないような人たちばかりだし。私じゃ釣り合わないよ」
特にアベルとヒースに関しては生きる世界の違う人たちだ。アベルは聖騎士、ヒースは次期教皇候補。本来、田舎の伯爵令嬢の自分が近づける人たちではないのだ。
つい表情が沈んでしまっていたらしい。ユリアが苦笑いをする。
「もう、鈍感なんですのね」
「……?」
「殿方たちはそうは思っていらっしゃらないかもしれませんのに」
「どういうこと?」
聞き返すと、ユリアがおだやかな表情で微笑む。
「有り体に言えば、アベルハルト様もケルヴィン様もヒース様も、貴女のことを特別に大切にしていらっしゃると思いますの。だって、他の女性への態度とは明らかに違いますもの」
「そう、かなあ?」
「ええ。もっと自分に自信をお持ちになって、セシィ!」
「うん。ありがとう、ユリア」
彼らと肩を並べても恥ずかしくない自分になりたいと思う。そして自分が心から尊敬できる好きな人と出会い、その相手も自分のことを好きになってくれて。そんな人と結ばれたら幸せだ。自分にはまだまだ先のことのように思えるけれど。
(ユリアにこそ、彼女を大切に想ってくれる殿方がいるといいのにな……)
セシリーナは心の中でそう思ったけれど、口に出すことは憚られた。侯爵家の令嬢である彼女は、政略結婚をする可能性が高いのだ。だから、恋愛をして結婚相手を見つけることは難しいかもしれない。それに対して辺境貴族の娘である自分は、父親から婚約者を自由に選んでよいと言われている。寛大な父親に感謝するべきなのかもしれなかった。
その後も話題は尽きず、親友との楽しい夜は更けていった。
「……ユリア、いる?」
皆が寝静まった夜。セシリーナは単身でユリアの部屋を訪れていた。さきほどの夕食時に彼女と約束をしていたのだ。今日の夜は憧れの女子会ならぬパジャマパーティをしようと。
セシリーナが廊下に佇んで返事を待っていると、こそこそと部屋の扉が開かれてユリアが顔を覗かせた。
「まあ! ようこそいらっしゃいましたわ。どうぞお入りになって」
「お邪魔します」
「ふふ、女の子だけで夜通しお話しできるなんて旅行の醍醐味ですわよね!」
ユリアがうきうきでセシリーナを部屋に招き入れる。室内には村の露店で売っていた珍しい果実や焼き菓子が用意されていた。よくよく見れば果実酒まで準備されている。
「……ユリア、もしかして飲む気?」
「もちろんですわぁ! お酒は淑女の嗜みですもの」
「そ、そうかなあ」
自分も彼女も成人しているからお酒はウェルカム。なのだけれど、羽目を外さないようにしなければ。ユリアは日ごろできない自由を満喫する気満々のようだ。
そうして始まったパジャマパーティは――果実酒の飲みやすさに後押しされて二人ともあっという間に酔っぱらってしまった。女子同士の他愛のないおしゃべりと笑い声が絶えまなく続く。
女子会と言えば恋愛話とばかりに、ユリアが呂律の回らない言葉で聞く。
「それでセシィ、今日は無礼講ですのれお聞きしたいのれすが」
「なんなりと」
「貴女はアベルハルト様とケルヴィン様とヒース様、どちらの殿方がお好きなんですの?」
「はえっ!?」
いきなりの話題に変な声が出てしまった。一気に酔いが醒めそうになる。
セシリーナはしばし考えてから首を横に振る。
「……今は、誰かとどうなりたいとかはないかなぁ」
「あらぁ、残念」
「そうというのも、今でこそ旅行事業があるから一緒にいられるけれど、それがなかったら一緒にいることは叶わないような人たちばかりだし。私じゃ釣り合わないよ」
特にアベルとヒースに関しては生きる世界の違う人たちだ。アベルは聖騎士、ヒースは次期教皇候補。本来、田舎の伯爵令嬢の自分が近づける人たちではないのだ。
つい表情が沈んでしまっていたらしい。ユリアが苦笑いをする。
「もう、鈍感なんですのね」
「……?」
「殿方たちはそうは思っていらっしゃらないかもしれませんのに」
「どういうこと?」
聞き返すと、ユリアがおだやかな表情で微笑む。
「有り体に言えば、アベルハルト様もケルヴィン様もヒース様も、貴女のことを特別に大切にしていらっしゃると思いますの。だって、他の女性への態度とは明らかに違いますもの」
「そう、かなあ?」
「ええ。もっと自分に自信をお持ちになって、セシィ!」
「うん。ありがとう、ユリア」
彼らと肩を並べても恥ずかしくない自分になりたいと思う。そして自分が心から尊敬できる好きな人と出会い、その相手も自分のことを好きになってくれて。そんな人と結ばれたら幸せだ。自分にはまだまだ先のことのように思えるけれど。
(ユリアにこそ、彼女を大切に想ってくれる殿方がいるといいのにな……)
セシリーナは心の中でそう思ったけれど、口に出すことは憚られた。侯爵家の令嬢である彼女は、政略結婚をする可能性が高いのだ。だから、恋愛をして結婚相手を見つけることは難しいかもしれない。それに対して辺境貴族の娘である自分は、父親から婚約者を自由に選んでよいと言われている。寛大な父親に感謝するべきなのかもしれなかった。
その後も話題は尽きず、親友との楽しい夜は更けていった。