メシマズな彼女はイケメンシェフに溺愛される
 まさか見破られるなんて。やはり自分の料理はまずいのだろうか。だけど、さすがプロと言う人までいたのに。

「妻を呼び捨てにするはやめていただきたい」
 乃蒼が低く唸るように言う。
「いつまで彼氏のつもりなんだろ」
「人の奥さんを呼び捨てはないわ」
 淳太の友達がひそひそとささやきあう。

「陽音、最終兵器を出すよ」
 乃蒼のささやきに顔を上げ、陽音は頷く。

「ご納得いただけないようなので、特別ゲストに登場していただきましょう。どうぞ」
 乃蒼が声をかけると、奥のパーテーションが動いた。
 ずらされたそこから出て来たスーツの男性ふたりに、淳太は息をのむ。

「なに?」
「どういうこと?」
 淳太の友人やその恋人たちは突然の展開にざわざわと彼らを見守る。

「須藤くん、みっともない真似はやめなさい」
「淳太、お前はなにをしているんだ」
 淳太は顔をひきつらせ、乃蒼を見る。

「こちらは須藤様の御上司と御尊父でいらっしゃいます」
「どうやって呼んだんだよ!」
「普通に会社に電話しましたよ。クレームに対応していただけない場合に上司に出て頂くのは普通の対処です。口コミ操作の疑惑やあなたの言ったことを伝え、今回の試食会に来て頂きました。御尊父には課長から連絡して頂きましたよ」
 課長と父親は苦虫をかみつぶしたような顔をして淳太を見ている。

「おふた方には事前に試食と同じ料理を召し上がっていただきました。お味はいかがでしたか」
「おいしかったですよ」
「私もおいしくいただきました」
「しかし、彼にはまずいらしいんですよ」
 乃蒼は大仰に肩をすくめた。
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