メシマズな彼女はイケメンシェフに溺愛される
「なんだよ、お前ら」
「おいしかったのに、バツにするとかねーわ」
 あきれた声に、隣の女性が頷く。

「元カノがイケメンと結婚したから嫉妬したの?」
「最初のやつ、生ハムがお花みたいでかわいかった」
「ローストビーフもうまい」
「最後のやつが良かった」
 途端に品評会が始まり、淳太は置いてけぼりになる。

「今度作り方教えてくださーい」
 ひとりの女性がしなを作って乃蒼に言う。
「すみません、そういうのはやってなくて」
 乃蒼が苦笑しながら断ったときだった。

 がたっと淳太が立ち上がる。
「いい加減にしろよ!」
 叫び声に、店内が静まり返る。
「お前ら、まずいって言えば料理が無料になるって喜んでたじゃねーか!」

「だってうまかったし」
「これなら普通に金出すよなあ」
 反論され、淳太の顔が怒りで真っ赤に染まる。

「ふさけんな!」
 淳太が投票用紙を薙ぎ払い、乃蒼を睨みつける。
「絶対におかしい! 最後のは陽音の料理だ、お前の母親のレシピだろ!」
 陽音の顔から血の気が引いた。くらりとふらついた彼女を、乃蒼がとっさに支える。
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