メシマズな彼女はイケメンシェフに溺愛される
「帰るぞ。申し訳ありません、謝罪は改めて」
 父親が頭を下げるが、乃蒼は冷たい目を向けた。
「必要ありません。来ないでいただきたいので。来た場合には法的手段に出ます」
 父親は、疲れたように頭を下げた。
 彼が淳太を連れて出て行くのを見て、陽音は目を細めた。
 かつて愛した人。こんな結末になるなんて当時は思ってもみなかった。

「私も失礼します。この件の対処に動きますので」
 淳太の上司も一礼して、店を出て行った。
 残された淳太の友人たちはお互いの間で視線をさまよわせる。

「お騒がせしました。打ち上げにワインとおつまみをお出しします。どうぞお楽しみください」
「いただいていいのかな」
「でもせっかくだし」
 ぼそぼそと彼らは話し合うのが聞こえた。

 陽音は乃蒼とともに厨房に戻る。
「陽音は上で休む?」
 心配そうな瞳に、陽音は首を振る。
「大丈夫、任せて」
 陽音が精一杯の笑顔を見せると、乃蒼は彼女の頭をぽんぽんと撫でた。

「ラストスパート、がんばろう」
「うん!」
 ふたりは力を合わせて料理とワインをふるまい、客たちは舌鼓みを打って笑顔を咲かせた。
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