メシマズな彼女はイケメンシェフに溺愛される
「……でも料理は食べてあげる」
 そう答える絢子の顔が赤いのは、酔いのせいだけには見えなかった。
 ボトルが空になるとふたりは仲良く店を出て行き、陽音が見送る。
 外は小雪が舞うほどの寒さだ。少し先でふたりが手を繋いでいるのを見てほほえましく店に戻る。

「どうだった?」
 乃蒼に聞かれて、陽音は頷く。
「うまくいきそう。もしかして乃蒼は知ってた?」
「修造さんに相談されたからね。胃袋を掴むのがいいよ、とアドバイスしたら速攻で料理教室に通い始めたよ。まさか俺たちの前で告白するとは思わなかったな」

「嬉しいな。大事な場面に私たちのお店を選んでもらえて」
「そうだね。人生に寄り添うことができて、そんな嬉しいことはない」

「寄り添うどころか、あなたの料理は私を救ったのよ。あのときのお店、リュミエール……光っていう意味よね。本当に、私にとって希望の光だった。今もまた、あなたは人々の希望の光なんだわ。暗い夜を照らす月のように」
「嬉しいこと言ってくれる。だけど、ね?」
 いたずらっぽく自分を見る乃蒼の目に、陽音は首をかしげる。

「月は太陽がないと輝けないんだよ。だからこれからも俺を照らして、俺の太陽(モン ソレイユ)
 陽音は照れてもじもじした。恥ずかしいけれど、嬉しくて胸がむずがゆい。
「私の体は乃蒼の料理でできているから、輝いているならあなたのおかげだわ」

「ありがとう、陽音。……俺は今、どんな極上の料理よりも陽音を食べたい」
「もう!」
 陽音が怒った声を出すと、乃蒼は、ははっと笑った。

「早く片付けて二階に戻ろう。今日は覚悟してね」
 色っぽく輝く瞳に、陽音はぷいっと横を向く。
 ふふっと笑った彼がカウンターを出てきて、陽音を抱きしめる。

 顔を上げると彼の顔が近付き、陽音は目を閉じる。
 重なる唇はもう、言葉を必要としない。
 しんしんと降る雪を溶かす熱い夜が、ふたりに訪れようとしていた。






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