帝の唯一の女〜巫女は更衣となり、愛に囚われる〜
「……巫女としての務めがありますので。」

それしか言葉が出ない。

「また……会えるだろうか。」

振り返った暁宮様の瞳が、私を捕らえて離さない。

まるで手を伸ばせば触れられる距離にあるような、熱を帯びた視線だった。

「……はい。きっと。」

胸がぎゅっと締めつけられる。

若宮御殿を出る時、ふと襖の隙間からあの方がそっと手を振っておられるのが見えた。

私は深く頭を下げ、その温もりを胸に刻んで歩き出した。

背中に、まだあの方の視線を感じながら――。
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