諦めていた恋の続きを始めます




東京に帰ったら、とりあえず大石の家にふたりで行く予定だ。

悠真と偽装とはいえ婚約する以上、大石家の家族にも話さなくてはいけない。
悠真のためだという理由はあるが、とても真実は言えなかった。

(婚約したフリだってことは黙っていなくちゃ)

和也に裏切られたのに、今度は悠真のために形だけ婚約者になるなんて反対されるに決まっている。
家族にうそをつくのは気が進まないが、今回ばかりは仕方がない。まどかが選んだことなのだ。

東京まで、長い時間ふたりきりだ。
フェリーで本州に渡り、新幹線に乗って東京に着くまでに、悠真としっかり相談ができる。

形だけとはいえ婚約する以上、なれそめなどを聞かれたら答えられた方がいい。
しかもふたりは同じ内容を話さなくてはいけない。

事実を交えながら、少し脚色する程度に話を合わせていく。
たとえば診療船で再会して付き合うことになったと言えば、間違いではないだろう。

「それでいいですか?」
「真実だから。それから何度か会って、俺が結婚を申し込んだことにすればいい」

「わかりました」

淡々と相談して、細かく決めていく。
ふたりでデートしたことを聞かれたら、思い出の場所をあの砂浜にしておけば写真もある。

まどかの胸の重みは増すばかりだが、婚約者としての形は整った。


大石家では、驚きながらも両親は喜んでくれた。
まどかが帰ると聞いて駆けつけてくれた琉輝だけは、悠真と婚約したことに懐疑的な顔をした。
大学時代の悠真と沙織のことを知っているし、周防家の内情が気になるのだろう。

「大丈夫か?」

悠真が帰ってから、まどかに確認してくる。
微妙な家族関係の真っただ中に立つことになるから、とても心配してくれている。

「何かあったら、すぐに知らせろよ」

兄らしい気配りはありがたいが、自分がこれから置かれる立場はまどかが一番よくわかっていた。

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