諦めていた恋の続きを始めます
十二月に入るとさらに忙しくなった。
診療所での仕事と、引継ぎの準備。それから借りていた家もきれいにしなくてはいけない。
すべて片付いたら、もう大晦日が近くなっていた。
悠真が迎えに来てくれたのは、病院が年末の休みに入ってからだった。
病院は十二月の二十九日から一月三日までは休日と決まっている。年末年始だけは、さすがに悠真もゆっくりできるらしい。
「まどかちゃん、東京でも元気でね」
「またふたりで遊びに来てくださいね」
島の人たちは、悠真がまどかの恋人だと思い込んでいる。
ふたり揃って船に乗るのを見て、わざわざ声をかけてくれた。
フェリーのデッキから、見送ってくれている島の人たちに手を振ると涙が出そうになってきた。
まどかは島で出会った優しい人たちのことを、この先もずっと忘れないだろう。
誰も知らないところに行きたくて旅に出たが、偶然出会った島に居ついてしまった。
まどかにとって、島で暮らした日々はとても意味のあるものだった。
これまでの生活や価値観を一変させるようなことばかりだったから、東京で働いていた頃より少しばかり成長できた気もする。
「まどか……」
悠真が心配そうに見つめてくる。
「大丈夫です。ちょっぴり感傷的になっただけ」
「また来ることもあるさ」
「そうですね」
ここから東京までは遠い。
つまり東京からも、おいそれと来られる距離ではない。
悠真は慰めようと言ってくれたかもしれないが、現実には難しいだろう。
だからこそ、島で過ごした時間はまどかにとって貴重なものだった。