諦めていた恋の続きを始めます
手探りの日々




しばらくは実家でのんびりできるかと思っていたら、新年早々に悠真から連絡があった。
両親から早く婚約者を紹介しろと催促されたらしい。

(いよいよだわ)

まどかは気を引き締めた。
婚約者らしく振る舞えるか不安だったが、悠真の足を引っ張るわけにはいかない。

三日の午後、悠真が大石家まで迎えに来てくれた。
車の助手席に乗り込むと、悠真はまどかの様子がいつもと違うことに気がついたようだ。

「大丈夫だよ。いつも通りのまどかでいいんだ」

軽く肩をポンと叩きながら、苦笑している。

「そんなに緊張しないで」

「は、はい」

そう言われても、着ている服から手土産まで、まどかはこれでよかったか気がかりだった。

お正月らしく着物にしようかとも思ったが、慣れないからかえって粗が目立ちそうだ。
ノーカラーのセットアップにしたが、中に着ているカシミアのセーターがカジュアルすぎる気もする。

まどかの頭の隅には、なぜか島で見た沙織の美しい姿が焼き付いてた。

(沙織さんと比べられたら……)

見劣りするだろうが、今さら考えても仕方がない。見苦しくなければいいと思うことにする。

「大丈夫だ。俺が選んだ人に文句は言わせない」

悠真の言葉はずるい。
「いつも通りでいい」「俺が選んだ人」というフレーズのそのひとつひとつが、まどかが言われてみたいと思っていたものだ。

隣で運転している人が本物の婚約者なら、どれほどうれしかっただろう。

「ありがとうございます」

それでもまどかは、悠真の言葉で少し落ち着いてきた。

周防家に着くまで、以前にふたりで打ち合わせた内容を確認した。
出会い、きっかけ、デート。その流れはとても自然に思えてくる。

(ここに愛さえあれば)

きっと本物の恋人になれただろう。
そんな甘い想像をしていたら、あっという間に周防家に着いた。




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