ホームラン王子と過ぎ去った青春をもう一度
 ――距離の縮め方、手慣れすぎでしょ……!?

 ドキドキと心臓を高鳴らせている自分が、悔しくて仕方がない。
 文句を言ってやりたい気持ちでいっぱいになっていれば、こちらを批難するような彼の声が聞こえてきた。

「高藤ってさ。大丈夫じゃないのに、平気なフリをするよな。そういうの、あんまりよくねぇぞ?」
「な、なんで……」
「んー? 勘?」
「はぁ……?」
「もう耐えられないって思ったら、ちゃんと言えよ。俺は別に、教育係なんて誰でもいいしさ?」

 小出くんに許可なく頭を撫でられたことよりも、同級生の口にした言葉にショックを受けた。

 ――私は自分の仕事を後回しにして、甲斐甲斐しく面倒を見てやっているのに。
 何よ、その態度は。
 教わっている立場だってこと、よくわかってないんじゃないの?

「おーい。高藤、大丈夫かー?」

 そんな喧嘩を売っているとしか思えない単語が頭の中でぐるぐると回っていたけれど、唇を強く噛みしめることでどうにかぐっと堪える。
< 12 / 62 >

この作品をシェア

pagetop