ホームラン王子と過ぎ去った青春をもう一度
4/ファーストデートはヒッティングマーチと共に
 久しぶりに実家へ顔を見せたら、お母さんに見つかって酷い目に遭った……。

『いつになったら結婚するの?』

 そんな話は聞き飽きた。
 耳がタコになるほど言い聞かされるは、嫌で堪らない。
 でも――無理やり相手を見つけて結婚したところで、幸せな未来が待ち受けているとは限らなかった。
 入籍して半日で離婚になるかもしれないし、「こんなはずじゃなかった」と愛想をつかされて不倫なんかに巻き込まれたら、「一生独身のままでいればよかった」と後悔する。

 ――だから、私の人生に異性のパートナーなんて必要ないのだ。
 ずっと、そう思っていた。
 悲しくてつらい気持ちをいだくくらいなら、好きな人なんて作らないほうがいいって。でも――。

『好きな女の子とこうやって駄弁るのって、青春じゃん?』

 私に好意をいだいていると思われる小出くんの教育係になってから、その気持ちがぐらつき始めた。

 ――誰かに自分を好きになってもらえる日がくるなんて、夢にも思っていなかった。

 だから――このチャンスを逃してはいけないという気持ちと、彼を信じたあとにはしごを外されてしまうのではないかと怯える気持ちが、交互に私の心を蝕んだ。
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