ホームラン王子と過ぎ去った青春をもう一度
 ――できれば予定は午前中に終わらせて、午後は身体を休めたいんだけど……。
 実家の物置から楽器を引っ張り出してくる時間を考えれば、午後でなければ約束の場所に顔を出せないのは明らかだ。

「仕方ないなぁ……」
「よっしゃ! 楽しみにしてる!」

 私は渋々了承し、ガッツポーズをしながら全身で喜びを表す彼を呆れたように見つめた。

 ――仕事中は週5でずっと一緒なのに……。
 私と休日会えるってだけでなんでそんなに大喜びするのか、さっぱり理解できなかったからだ。

「ホームラン王子って、わかりやすいですよねー」
「わかる。高藤さんの前では、犬って感じ?」
「あれはどっからどう見ても、忠犬ですよ!」

 事務員たちがこちらに微笑ましそうな視線を向けて噂話を続ける声になんとも言えない気持ちでいっぱいになりつつ、私はどうにか業務を終えた。
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