ホームラン王子と過ぎ去った青春をもう一度
「――電話、出なくていいよ」
「でも……」
「お客さんの名前、聞いてください。心当たりのない人は全員、不在で通して」
「は、はい!」

 彼は事務員に指示を出すと、左右に首を振ってから席を立つ。
 指先を絡め取られているせいで一緒に行動する羽目になった私は、慌てて同級生に問いかけた。

「どこに……!」
「社長のところ」
「どうして……っ」
「俺のせいだから」
「小出くん……?」
「心配すんな。巻き込んじまった以上、高藤だけは、絶対に守るよ」

 彼の決意を秘めた表情に嫌な予感がした私が訝しげな視線を向けると、後方から叫び声が聞こえた。
 何事かと二人一緒に振り返れば、そこには守衛に押さえつけられた女性がいて――。

「ああ! ほら! やっぱりここにいた!」
「お、落ち着いてください……!」
「ホームラン王子! そんな女の、どこがいいの!? 私のほうがよっぽどかわいいでしょ!?」
「ひ……っ」

 その声が先程電話越しに怒鳴りつけてきた女性だと知り、恐怖で喉が引き攣った。

 ――例の件が報道されてすぐに、こうしてファンが押しかけて来たのだ。

 これから彼と一緒に居続ける限り、見ず知らずの人間から悪意を向けられるのだと思ったら――身体が小刻みに震えるのを止められない。
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