ホームラン王子と過ぎ去った青春をもう一度
「その人、警察に突き出してください」
「わ、わかりました……!」

 警備員に向かって冷たく言い放った小出くんは、足が竦んで動けない私の手を引く。
 まるで生まれたての子鹿のようにガクガクと全身を揺らし、どうにか社長室までやってきた。

「ああ、小出くん。ちょうどいいところに来てくれたね」
「迷惑かけて、すいません」
「いや、私は問題ないよ。それよりも……大丈夫かい? 顔色が悪いようだけど……」
「しゃ、社長……」

 もう無理です。
 我慢できませんなんて言おうものなら、出社するなと命じられかねない。
 こんな想定外の出来事で有給なんて使いたくなくて、引き攣った笑みを浮かべて気丈に振る舞う。

「だ、大丈夫です……。ご心配をおかけし、申し訳ございません……」
「何が起きたのかさっぱりわからず、驚いただろう。まずは、情報共有から始めようか」

 社長は秘書に命じると、壁際に立てかけてあったスクリーンにある画像を映し出す。
 それはSNSサイトに投稿された、ある一つのつぶやきだった。

「高藤さんが突撃取材を受けた際の映像が、モザイクつきで全国放送された。背景も隠してくれたら、よかったんだけどね……」
「あ……!」
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