残業以上恋未満
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翌年。夏。お盆休み前。
私は一つのお菓子を手に、残業していた。
去年の今頃、遅くまで残業していて高松部長に出逢った。
今年も、もしかしたら……。
「まだ残っているのか?」
フロアの入口から聞こえてくる声に、私はばっと顔を上げた。
その優しくて穏やかで、温かい声を、忘れるはずがない。
入口に立ってこちらを驚いたような瞳で見つめる男性は、長身でスタイルがよく、空色のワイシャツは袖口を少し捲り、胸元のボタンは少し開けていた。
私の顔を見ると、呆れたように、けれど嬉しそうに微笑んだ。
終わり


