Devil's Night
 
 チャイルドシートから抱き上げると、陽人はすぐに泣き止んだ。


「ハル、どこか痛い?」


 陽人は私の首に抱きついたまま、激しく首を振った。多分、ベルトが体に食いこんだ痛みで泣いたのだろう。ホッとして体中の力が抜ける。


 そのとき、やっと自分の無力さを思い知った。


――私は夫を支えるどころか、足手まといでしかない。


 やっぱり日本に帰って、夫からの連絡を待つ方がいいのかも知れない。絵莉花の無事を信じて……。
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