Devil's Night
 
 結局、成田まで一睡もできず、疲れきった体で陽人の手を引き、長い通路を歩いた。


 陽人の歩く速さに合わせたせいか、やっと見えてきた入国ゲートは、もう人もまばらになっている。バッゲージクレームでは、ターンテーブルがもう回っていて、すぐに目印の赤いハンカチを結んだスーツケースが出てくる。急いで手を伸ばした。その重さにふらついたとき、誰かが荷物の底を支えてくれた。


「すみませ……あ、香織?」


「ほんと、美月は昔っから非力だね」


 香織がニコニコ笑っている。




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