Devil's Night
 
 そして、病院の前に停まっているタクシーに乗った。


「すみません。この住所、わかりますか?」


 封筒の中の用紙を出して、書いてある住所を見せる。


「ええ。わかりますよ」


 運転手は軽く答えて車を出したが、私自身は、その町の名前を聞いたことがない。自分の住んでいるのと同じ市内のはずなのに、と不思議な気がしていた。


 バックシートにもたれ、院長から渡された白い封筒をぼんやりと見つめていた。 


 やがて、タクシーがかつてゴーストアパートのあった辺りに近づいていることに気付き、不吉なものを感じた。


「本当にこの辺りなんですか?」


おそるおそるドライバーに聞く。


「ええ。この辺はつい最近、住所表記が変わっちゃって。ちょっと前までは、お客さんに言われてもなかなかピンと来ませんでしたよ」


前を向いたまま、運転手が明るい声で答える。


「そう……ですか……」


「けど、あの気味悪い建物がなくなってスッキリしましたよね」


ドライバーは笑いながら、ハンドルをきった。


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