Devil's Night
 
「あ。北浦くんだ」


 声を弾ませた香織のうるんだ視線の先に、学生服姿のカイがいた。ゴーストアパートにいる時はいつも黒いトレーナーかセーターを身に付けている彼が、今日は香織の通っている有名私立の黒いつめ襟。


「香織。カイのこと、知ってるの?」


 私が尋ねると、香織も不思議そうな顔をした。


「美月、なんで北浦くんの名前、知ってるの?」


 私は戸惑いながらも、カイに初めて出会った日のことを話した。


「確かにあの土地は北浦くんのお父さんの物らしいけど……」


 大ケガをしていた彼が、血痕すら残さずに消え失せた話は、やはり信じてもらえなかった。


「北浦くんが毎日ゴーストアパートに行ってるなんて、信じられない」


 そう言われると、人違いであるような気がしてきて、それ以上は何も話せなくなった。
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