調香師の彼と眼鏡店の私 悩める仕事と近づくあなた
「売れたんだ」
「はい!」
「ちょっと接客に時間かけすぎだけどね。一人の客にあんなに時間かけてたら、ピークタイム捌けないよ。他の客を蔑ろにする気?」
毒が滲んだ言葉に、紗奈の眉間にシワが寄る。言い返そうと口を開いた時、背後から「それはちょっと違うよ」という声が聞こえてきた。
「店長……! おはようございます」
「何が違うんですか? 俺、間違ったこと言っていませんけど」
いつの間にか出勤していた店長は、二人のやり取りを聞いていたようだ。
「確かに高橋くんの言う通り、ピークタイムには出来ない接客だったね。だけど、亀井さんはきちんと周囲に目を配りながら接客していたよ。状況を見ながらだったら、丁寧に接客するのはむしろ良いことだ」
「……そうですか」
高橋は面白くなさそうな表情を浮かべて、その場から離れていった。
店長は気にした様子もなくニコニコと笑みを浮かべた。
「さっきのお客様、とても嬉しそうだったね。亀井さんは接客に自信持っていいからね」
「ありがとうございます」
「バックヤードにいるから、何かあったら声かけてね」
店長はそう言い残して高橋の方へと向かっていった。そうして彼と二言三言話すと、彼の表情がパッと明るくなる。
(店長ってすごいな。皆のやる気を引き出してくれる。私が店長になったら……いや、あんな風には出来ないわ。それに店長になったら、接客もほとんど出来なくなるのよね)
紗奈は店長が見えなくなった店内で、小さくため息をついた。
「はい!」
「ちょっと接客に時間かけすぎだけどね。一人の客にあんなに時間かけてたら、ピークタイム捌けないよ。他の客を蔑ろにする気?」
毒が滲んだ言葉に、紗奈の眉間にシワが寄る。言い返そうと口を開いた時、背後から「それはちょっと違うよ」という声が聞こえてきた。
「店長……! おはようございます」
「何が違うんですか? 俺、間違ったこと言っていませんけど」
いつの間にか出勤していた店長は、二人のやり取りを聞いていたようだ。
「確かに高橋くんの言う通り、ピークタイムには出来ない接客だったね。だけど、亀井さんはきちんと周囲に目を配りながら接客していたよ。状況を見ながらだったら、丁寧に接客するのはむしろ良いことだ」
「……そうですか」
高橋は面白くなさそうな表情を浮かべて、その場から離れていった。
店長は気にした様子もなくニコニコと笑みを浮かべた。
「さっきのお客様、とても嬉しそうだったね。亀井さんは接客に自信持っていいからね」
「ありがとうございます」
「バックヤードにいるから、何かあったら声かけてね」
店長はそう言い残して高橋の方へと向かっていった。そうして彼と二言三言話すと、彼の表情がパッと明るくなる。
(店長ってすごいな。皆のやる気を引き出してくれる。私が店長になったら……いや、あんな風には出来ないわ。それに店長になったら、接客もほとんど出来なくなるのよね)
紗奈は店長が見えなくなった店内で、小さくため息をついた。