調香師の彼と眼鏡店の私 悩める仕事と近づくあなた
予想外の言葉に、紗奈の目が点になる。
佐々木は紗奈の戸惑いを気にすることなく、「どうして」と連呼している。
「私だって……グスッ。うぅ、こんなにっ……」
段々と佐々木の声が弱々しくなり、最後には泣き出してしまった。
(うわぁ、精神的に追い詰められてるなぁ)
「お、落ち着いて」
「もう、嫌……! 限界……」
電話の向こう側からは佐々木の泣き声が響いている。
紗奈は腕時計をチラリと見た。佐々木の退勤時間までは一時間ほどある。
「佐々木さん。この電話を切ったら五分で泣き止みなさい。私、お客様へお渡しする資料を忘れたみたい。それを佐々木さんに届けてもらうことにしたから。……店長にそう言って、そのまま退勤しなさい。……一人でゆっくり過ごして」
「え? い、いいんですか?」
「大丈夫。ほら、泣きやんでね」
そう言って電話を切ると、急いで店長の携帯に連絡を入れる。
『……というわけで私の一存で佐々木さんを退勤させます。代わりに私が店に戻ります』
メッセージを送ると、すぐに既読になった。
『連絡ありがとう。助かったよ。今日は余裕があるから亀井さんも直帰で大丈夫だよ』
店長の返信を見て、紗奈は深いため息をついた。
「ふぅ……。店長に気を使わせちゃったな」
(こんな方法、付け焼き刃よね。他の人にも負担をかけてしまうし。でも佐々木さん、体力的にも精神的にも限界って感じだったしなぁ。うーん……高橋さんが知ったらまた怒りそう)
ぐるぐると思案しても、どうするのが最善だったのかは分からない。
「あー……! もうっ、歩こう! 歩きながら街のマンションを観察しちゃおう! この辺りはマンション建設予定地も結構多いし、雰囲気をつかみに行っちゃうのもあり」
仕事用の眼鏡を外し、仕事モードからオフモードへと無理矢理切り替えようと試みる。
「とにかく、歩いて一旦忘れよ」
そうしてモヤモヤを振り払うように歩いた先で、紗奈は香水店『Ennolyume』を見つけ、小笠原と再会したのだった。
佐々木は紗奈の戸惑いを気にすることなく、「どうして」と連呼している。
「私だって……グスッ。うぅ、こんなにっ……」
段々と佐々木の声が弱々しくなり、最後には泣き出してしまった。
(うわぁ、精神的に追い詰められてるなぁ)
「お、落ち着いて」
「もう、嫌……! 限界……」
電話の向こう側からは佐々木の泣き声が響いている。
紗奈は腕時計をチラリと見た。佐々木の退勤時間までは一時間ほどある。
「佐々木さん。この電話を切ったら五分で泣き止みなさい。私、お客様へお渡しする資料を忘れたみたい。それを佐々木さんに届けてもらうことにしたから。……店長にそう言って、そのまま退勤しなさい。……一人でゆっくり過ごして」
「え? い、いいんですか?」
「大丈夫。ほら、泣きやんでね」
そう言って電話を切ると、急いで店長の携帯に連絡を入れる。
『……というわけで私の一存で佐々木さんを退勤させます。代わりに私が店に戻ります』
メッセージを送ると、すぐに既読になった。
『連絡ありがとう。助かったよ。今日は余裕があるから亀井さんも直帰で大丈夫だよ』
店長の返信を見て、紗奈は深いため息をついた。
「ふぅ……。店長に気を使わせちゃったな」
(こんな方法、付け焼き刃よね。他の人にも負担をかけてしまうし。でも佐々木さん、体力的にも精神的にも限界って感じだったしなぁ。うーん……高橋さんが知ったらまた怒りそう)
ぐるぐると思案しても、どうするのが最善だったのかは分からない。
「あー……! もうっ、歩こう! 歩きながら街のマンションを観察しちゃおう! この辺りはマンション建設予定地も結構多いし、雰囲気をつかみに行っちゃうのもあり」
仕事用の眼鏡を外し、仕事モードからオフモードへと無理矢理切り替えようと試みる。
「とにかく、歩いて一旦忘れよ」
そうしてモヤモヤを振り払うように歩いた先で、紗奈は香水店『Ennolyume』を見つけ、小笠原と再会したのだった。