調香師の彼と眼鏡店の私 悩める仕事と近づくあなた
「それで、亀井さんの体力と時間に余裕があるようでしたら、今からでも美術館に行きませんか?」
「い、いいんですか?」
「はい。是非」
「す、すぐ向かいます! 小笠原さんはお店にいらっしゃるんですか?」
弾けるように答えると、電話の向こうから小笠原の笑い声が聞こえた。
「僕が迎えに行きますよ。今、お店を出たところなんでしょう?」
「すみません」
紗奈は急に恥ずかしくなって小さな声で謝ると、彼は笑いながら「すぐに向かいます」と返してくれた。
電話を切った紗奈はソワソワと腕時計を見る。
(こんなことなら、更衣室でもう少し整えてこれば良かった)
仕事を終えてヨレヨレの状態で小笠原に会うのは二度目だ。向こうは「そういう人」だと思っているだろう。
諦めの気持ちが沸き上がりつつも、スマホを見ながら前髪を整える。そしてお守りのように鞄に忍ばせていた試作用の香水を、ほんの少しだけうなじにつけたのだった。
「お待たせしました。どうぞ、乗ってください」
以前送ってもらった時と同じように助手席に乗せられ、小笠原の車はスムーズに発車した。
「お疲れじゃないですか? 無理に誘ったかなって反省しました」
「全然! こちらの都合でキャンセルしたのに誘っていただけて嬉しかったです」
「ははは、亀井さんにいただいたチケットなんだから誘いますよ」
「でもお礼にお渡ししたものなのに。ふふふっ」
二人の笑い声が重なる。紗奈はそれが心地よかった。
「亀井さんって美術館とかよく行くんですか?」
「こんな風に時々チケットをいただくので、たまに」
「俺もそんな感じ……ってすみません。リラックスしすぎて口調が崩れました」
小笠原が少し焦ったように謝るのが面白くて、紗奈はつい笑ってしまった。
「構わないです。今はお互い勤務中ではないですから。私もさっきから少し崩れています」
「そう言ってもらえると助かる。プライベートであの感じだと肩が凝っちゃって」
「分かります。私もそう」
「良かった、俺だけじゃなくて」
安心したように笑う小笠原は、これまでの雰囲気より親しみやすかった。
(緊張するかもって思っていたけれど、すごく話しやすいし、楽しい!)
美術館までのドライブは、穏やかな時間が流れていた。
「い、いいんですか?」
「はい。是非」
「す、すぐ向かいます! 小笠原さんはお店にいらっしゃるんですか?」
弾けるように答えると、電話の向こうから小笠原の笑い声が聞こえた。
「僕が迎えに行きますよ。今、お店を出たところなんでしょう?」
「すみません」
紗奈は急に恥ずかしくなって小さな声で謝ると、彼は笑いながら「すぐに向かいます」と返してくれた。
電話を切った紗奈はソワソワと腕時計を見る。
(こんなことなら、更衣室でもう少し整えてこれば良かった)
仕事を終えてヨレヨレの状態で小笠原に会うのは二度目だ。向こうは「そういう人」だと思っているだろう。
諦めの気持ちが沸き上がりつつも、スマホを見ながら前髪を整える。そしてお守りのように鞄に忍ばせていた試作用の香水を、ほんの少しだけうなじにつけたのだった。
「お待たせしました。どうぞ、乗ってください」
以前送ってもらった時と同じように助手席に乗せられ、小笠原の車はスムーズに発車した。
「お疲れじゃないですか? 無理に誘ったかなって反省しました」
「全然! こちらの都合でキャンセルしたのに誘っていただけて嬉しかったです」
「ははは、亀井さんにいただいたチケットなんだから誘いますよ」
「でもお礼にお渡ししたものなのに。ふふふっ」
二人の笑い声が重なる。紗奈はそれが心地よかった。
「亀井さんって美術館とかよく行くんですか?」
「こんな風に時々チケットをいただくので、たまに」
「俺もそんな感じ……ってすみません。リラックスしすぎて口調が崩れました」
小笠原が少し焦ったように謝るのが面白くて、紗奈はつい笑ってしまった。
「構わないです。今はお互い勤務中ではないですから。私もさっきから少し崩れています」
「そう言ってもらえると助かる。プライベートであの感じだと肩が凝っちゃって」
「分かります。私もそう」
「良かった、俺だけじゃなくて」
安心したように笑う小笠原は、これまでの雰囲気より親しみやすかった。
(緊張するかもって思っていたけれど、すごく話しやすいし、楽しい!)
美術館までのドライブは、穏やかな時間が流れていた。