「好き」って言って


「あ、あのさ、糸瀬。朝の男は、転校初日で心細そうだからわざわざ迎えにきて学校まで一緒に行ってやったんだろ?」


放課後、掃除当番が被っていた俺たちは中庭の掃除を各自やっていた。

夕暮と掃除をしていた糸瀬だったけど、夕暮がちりとりを取りに行き一人になったタイミングでそそくさと糸瀬に話しかけた。


「…え?そう、だけど…なんで知ってるの?」

「え!?あーたまたま風の噂で流れてきて?」


曖昧に誤魔化しながらも、心の中でガッツポーズを取る。

これで糸瀬があの男とはなんともないことが証明された。


「…気になるの?」

「…は?」


にやけそうになる顔を引き締めながら前を向くと、糸瀬が小首を傾げながら上目遣いで俺をじっと見上げていて、急な可愛さに思わず胸を撃ち抜かれる。

な、なんだ、この可愛い生き物は…。

今すぐ強く抱きしめたい衝動に駆られながらもぐっと堪える。


「…いや、別に。朝から男と登校なんてしてるから、見せつけてるのかと思って」
< 27 / 36 >

この作品をシェア

pagetop