憧れの専務は私の恋人⁉︎
「専務!?」
ピンチの時に助けてくれるなんて、まさにヒーローだ。知ってる人に会えて、ふっと肩の力が抜けた。
「やっぱりうちの会社の人だよね。1人なの?篠原さんは?」
「それが……」
私は一緒に来るはずの同僚が休んでしまい、1人であることを話した。篠原さんならまだしも、平社員の私が1人で商談するなんて無謀だ。新商品の発売まではまだ時間があるから、別の方法でPRすればいい。会社へ戻る決意を固めていると、専務がこちらを向いた。
「わかった。僕が付き添うよ。」
「……えっ?」
思いがけない提案に固まった。
「2人で回る予定だったなら、2人いればできるよね?」
「専務はお忙しいですよね?これは、私の部署の問題ですから……」
「自社の商品を宣伝することは、僕の役目でもある。気にしないで。」
私は思わず胸を押さえた。私の部署は、予算も少なくて人数もいない小さな部署。そんな私たちのことも専務は気遣ってくれている。
(そんなこと言われたら、ますます好きになっちゃうんですけど……!)
「もしかして、早川さん……かな?」
「は、はい!早川です!」
(どうして私の名前を知ってるの!?)
「篠原さんがすごく褒めてたんだ。早川さんと……えっと松田さん。2人の頑張りがあって、新商品は完成したと言っていた。」
(篠原さんがそんなことを……!ありがとう篠原さん!)
なんだか涙が出そうになってしまう。
「せっかく完成したんだ。色んな人に試してもらわないと。まずは……あの社長のところへ行こう。」
専務が視線を向けた先にいるのは、界隈では有名な美人社長。たくさんの人に囲まれていて、とても話しかけられそうにない。
(あそこは無理だよ……!)
物怖じする私に構わず、専務はスタスタと歩いていく。私は置いて行かれないように慌てて専務を追いかけた。
美人社長を皮切りに、専務は次々と声をかけてきっかけを作ってくれた。たくさんあった試供品は全部無くなり、私の名刺もあと数枚。しかも、いくつかの仮契約まで決めてしまった。
(凄すぎる……!)
明日から忙しくなるに違いない。篠原さんにはやり過ぎだと文句を言われるかもしれないけど、ご愛敬。専務が助けてくれなかったら、私は名刺を1枚も渡せないまま会社に戻っていたことだろう。
(お礼を言ってから帰ろう……)
専務は少し先で商談をしている。自分の商談を差し置いて、私を手伝ってくれたのだ。
(立ってるだけでカッコいいなぁ……)
ぼーっと見つめていると、ふいに専務はこちらを向いて小さく手招きした。新たな取引先かもしれないと思い、私は名刺を取り出しながら専務に駆け寄った。すると──
「実は、彼女が僕の婚約者なんです。」
「???」
私は何度か瞬きを繰り返した。専務は何事もなかったかのように、当たり前に話を進めていく。私は目を見開いたままそっと名刺をしまった。
ピンチの時に助けてくれるなんて、まさにヒーローだ。知ってる人に会えて、ふっと肩の力が抜けた。
「やっぱりうちの会社の人だよね。1人なの?篠原さんは?」
「それが……」
私は一緒に来るはずの同僚が休んでしまい、1人であることを話した。篠原さんならまだしも、平社員の私が1人で商談するなんて無謀だ。新商品の発売まではまだ時間があるから、別の方法でPRすればいい。会社へ戻る決意を固めていると、専務がこちらを向いた。
「わかった。僕が付き添うよ。」
「……えっ?」
思いがけない提案に固まった。
「2人で回る予定だったなら、2人いればできるよね?」
「専務はお忙しいですよね?これは、私の部署の問題ですから……」
「自社の商品を宣伝することは、僕の役目でもある。気にしないで。」
私は思わず胸を押さえた。私の部署は、予算も少なくて人数もいない小さな部署。そんな私たちのことも専務は気遣ってくれている。
(そんなこと言われたら、ますます好きになっちゃうんですけど……!)
「もしかして、早川さん……かな?」
「は、はい!早川です!」
(どうして私の名前を知ってるの!?)
「篠原さんがすごく褒めてたんだ。早川さんと……えっと松田さん。2人の頑張りがあって、新商品は完成したと言っていた。」
(篠原さんがそんなことを……!ありがとう篠原さん!)
なんだか涙が出そうになってしまう。
「せっかく完成したんだ。色んな人に試してもらわないと。まずは……あの社長のところへ行こう。」
専務が視線を向けた先にいるのは、界隈では有名な美人社長。たくさんの人に囲まれていて、とても話しかけられそうにない。
(あそこは無理だよ……!)
物怖じする私に構わず、専務はスタスタと歩いていく。私は置いて行かれないように慌てて専務を追いかけた。
美人社長を皮切りに、専務は次々と声をかけてきっかけを作ってくれた。たくさんあった試供品は全部無くなり、私の名刺もあと数枚。しかも、いくつかの仮契約まで決めてしまった。
(凄すぎる……!)
明日から忙しくなるに違いない。篠原さんにはやり過ぎだと文句を言われるかもしれないけど、ご愛敬。専務が助けてくれなかったら、私は名刺を1枚も渡せないまま会社に戻っていたことだろう。
(お礼を言ってから帰ろう……)
専務は少し先で商談をしている。自分の商談を差し置いて、私を手伝ってくれたのだ。
(立ってるだけでカッコいいなぁ……)
ぼーっと見つめていると、ふいに専務はこちらを向いて小さく手招きした。新たな取引先かもしれないと思い、私は名刺を取り出しながら専務に駆け寄った。すると──
「実は、彼女が僕の婚約者なんです。」
「???」
私は何度か瞬きを繰り返した。専務は何事もなかったかのように、当たり前に話を進めていく。私は目を見開いたままそっと名刺をしまった。