美人の香坂さん、酒は強いが恋愛は最弱
驚きのあまり受けとった箸を持ったまま固まっていたら、サバを一口分をほぐして差し出してきた。

「さば、食べます?」
「唐揚げ、食べます」
「じっと見てたから、サバが食べたいのかと思いました」
「、、、。私さ」

唐揚げをほおばりながら話し始める。

「?」
「『肉肉屋さん』ってくらいだからお肉食べたいときしたここに来なかったんだけど」
「はい」
「サバもおいしいの?」

ふっと八木は笑い、

「やっぱり食べたいんじゃないですか」
「いやいや。そういうわけではなく、、、ちょっと気になる」

八木は一口分をほぐし、
「はい」
とまるで彼女にあーんと食べさせるみたいに差し出してきた。一瞬口を開けそうになったが
「いや、ダメダメ」
とお断りする。
「ははははっ惜しい!」
「なにがよ!なんか、八木君、いちいち甘い!」
「なんですかそれ!」

と笑いながら食事を再開させた。
八木はお椀と箸の持ち方がきれいで、魚の骨を器用に取り除いていく。

「すごく、きれいに魚食べるね」
「あー。うち、子供の頃、金曜日は魚の日でした。骨のある魚を食べる日」
「えー?なにそれ」

八木と二人きりのランチは楽しかった。
会話がなくなって間がつらいと感じることもない。必死にネタを探したわけではないのに、共通の話題が尽きることもなく続いた。
ゆっくり食べるし、ゆっくり話せた。

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