美人の香坂さん、酒は強いが恋愛は最弱
にこやかに微笑み返しつつも、心の中では思いっきりパニックになる。
とりあえず頭はフル稼働。
ぐびぐびとビールを飲みつつ女性陣に目をやる。
まだ見ている・・・。
正直こういう視線は無理。 怖い!
大学時代の嫌な思い出が頭をよぎる。


そう思っていたら、秘書課の子がビールを持ってきた。
「お疲れ様です」
とにっこりとほほ笑んでビールを継いできた。

「香坂さんですよね」
「あ、はい」
「口田人事課長の彼女さん。ですよね」
「あ…あははは‥‥」
「口田課長って香坂さんだけに激甘ですよね。優子って呼ぶし」
「昔からの知り合いなのでつい。…気を付けます」
「ふふふ。 香坂さんが気を付けるって、ふふっ。 
気を付けて呼ぶのは課長ですよ。ふふふ」
「ふふふ」
「ふふふふ」

怖い!!無理!!どうする!?
正しい返しは!?
正解は!!??
てか、無理!!!わからんーーー!!!

「よし、じゃあ、せっかくなんで3人で飲みますか!」
正しい返答に困った私は、とりあえず飲んで酔っ払ってヘロヘロにしてしまう(振りをする)ことにした。
うん。お酒は正義だもんね。
一人で納得してグラスを持った。

「おっとっとー」
私はいつも以上におどけてグラスを持ち上げてストップの合図をする。
「はい」
小山内さんが持っている瓶ビールを取り、返杯をしようとすると
「あ。私ビールって苦くて飲めないんですよ」
と断られた。

飲んでごまかせ作戦、早くも失敗に終わった。

しかし八木君が持ってきたもう1つのグラスを手に持った。
「では、代わりに僕がいただきます」
と再びキラースマイル。

「おっとっとー」
八木君もおどけた真似してストップの合図をする。
「八木君、わかってるねえー」
と乾杯する。
「カンパーイ」
「カンパーイ、ほら、小山内さんも!それなんですか?」
「カンパリオレンジです」
「それなら、カンパリー!」
「え?」

「ほら、カンパリ―! 八木君も」
「「カンパリー!」」
カチャンとグラスが音を立てる。

「カ、カンパリー?」
と疑問符が浮かぶ小山内さんにも、無理やり意味不明な音頭を取らせる。

ぐびぐびぐび
ぐびぐびぐび
こくん。

「はい、お代わり」
「あ、どうも。 はいお代わり」
八木君と二人でビールを継ぎあう。
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