美人の香坂さん、酒は強いが恋愛は最弱
亮太郎が帰って来るまでに急いでお風呂に入り、洗濯された亮太郎のジャージに着替えた。
髪を乾かそうと鏡の前に立つ。
鏡に映る自分の目が泣き過ぎて重く腫れていた。
ずっと眠っていたにも関わらず目の下には隈があるし、唇は乾燥してカサカサになっている。

「ひっどい顔!!これじゃ明日仕事行けないじゃない!!」

引き出しから亮太郎んちのおばちゃんのお高い美容液シートマスクを引っ張り出し、化粧水を塗った顔に丁寧に貼り付けた。


  ピンポーン

チャイムが亮太郎の帰宅を知らせた。
シートマスクを貼り付けたまま、頭に巻いたタオルがずり落ちないように右手で支えながら玄関のドアを開けた。

「おかえ、、、、、」
訪問者の顔を見て優子は静止画像のように固まった。
そこにいたのはは亮太郎ではなく八木君だったのだ。

「いやあああああ!!」

と叫んで、ドアを閉める。

「え?ちょっ香坂さん!俺です!八木です!」
ドンドンとドアを叩きながら八木が呼びかけた。

「なんで八木君!?」
「口田課長に頼まれました」
「亮太郎に?」
「すみません。本当は俺が頼みました。 香坂さんのことが気になって・・・しまって・・・」

八木の口調はだんだんゆっくりと、小さくなっていった。

「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」

玄関のドアを挟んで、二人の間に沈黙が流れた。
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