美人の香坂さん、酒は強いが恋愛は最弱

「急に来てすみませんでした。　アイスとか、いろいろ買ってきたので。　
袋、ここにかけておきますね」
ガサガサとドアノブに買い物袋をひっかける音がした。

ガチャ。
ドアをほんの少しだけ開く。

「ごめんちょっと待っててもらえる？」

八木の返事を聞くと、急いでリビングを見渡した。
「全然キレイ！　ありがとう、亮太郎！」
キレイ好きな従兄がきちんと片付けていて、急な来客も問題ない。

「うちじゃなくてよかったよ」
と一人言を言いながら、急いで頭に巻いていたタオルを洗濯機に入れた。
鏡を見ながら、髪はザックリとヘアクリップでまとめた。
あとは貼ったばかりの高級シートパックだ。

もったいないよね。

キッチンに行って平皿に丁寧に剥がしたパックをおいてラップをかけた。
「これでよし」

ぐるっと1Kの部屋を見渡して、指さし確認をして、玄関を開けた。

「お、お待たせしました。ど、どうぞ」
と室内に招き入れた。優子は少しうつむいたままだ。

「突然にすみません。
これ、スポドリとか、おにぎりとか、ゼリーとか。　あ、アイスもあるんで冷蔵庫に」
大きく膨らんだお買い物袋を受け取ろうとした。
「重ッ」
2袋にパンパンに入った食べ物たちは思ったより重くて、キッチンのテーブルに運んでもらった。

「わざわざごめんね。ありがとう」
冷蔵庫に移しつつ、
「てか、量が多すぎじゃない？」
と笑ってしまった。

「いやあ、何がいいかわかんなくてあれやこれやと籠に入れたらこんなことに」
八木君は肩をすぼめて、照れ笑いをした。

「でもありがとう。嬉しい。いくらだった？」
「いりませんよーお見舞いですから」
「でも。　こんなにたくさん」
「本当に。気にしないでください」
「あ、そか・・・うん。ごめんね。ありがとう」
「いえ。　あ、手伝います」

横に立った八木くんが買った物を手渡し、私が冷蔵庫に食べ物を入れた。