美人の香坂さん、酒は強いが恋愛は最弱
第2章

I LOVE おひとり様


【side 香坂優子】

「おいしいいいい」

私、香坂優子はぬる燗を一口飲んで、ほうっと息を吐く。
この鼻から抜ける柔らかい香りに幸せを感じる。

今週も頑張って働いたなあ。
と付け出しのお浸しを少し口に入れ、手酌でお猪口に日本酒をついで飲む。
日本酒が好きなのだが、銘柄など全く詳しくない。
でも、ここの居酒屋は、こんなリクエストすると抜群のチョイスをしてくれるので問題なくおいしいお酒を飲むことがでした。
これにここは職場から近くなので、帰宅ラッシュを避けて一杯飲むにはもってこいだった。


しあわせだなあぁ~。


ちなみに今日は
「甘口のぬる燗が飲みたい。今週忙しくて、ほってしたいんです」
というと秋田の香りのよいお酒が出てきた。

リクエスト通りのおいしさにほ―――――っとしつつ、カウンター席で店主がやく焼き鳥をじっと見つめた。

金曜日ということもあって、3つあるテーブル席は満席だし、奥の座敷も宴会の準備が整っている。
やはりリーズナブルでおいしい居酒屋は人気があるのだなと思いつつ、カウンター席で一人ちびりちびりとお猪口に口をつける。

そのうちジュウっといういい音がしてきて、タレの焦げる苦くて甘い香りに鼻がぴくぴくしてしまう。
目を閉じ、深呼吸をして、音と香りでもう一口日本酒を飲む。すると、

「あれ?香坂さん?」
という声がした。

いきなり声をかけられて慌てて振り返ると、同期入社の・・・・・・誰だっけ?・・・まあいいや。名前を忘れてしまった男性がにこにこ立っていた。



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