亡国の聖女は氷帝に溺愛される


 目を開けると、見慣れた天井が視界いっぱいに映った。

 セシルに担がれるようにして、自室に戻ってきた記憶がある。その時、何故か傍らにルーチェが居たことも。

 ゆっくりと身体を起こすと、ベッドの右側にルーチェが突っ伏していた。今もなお感じる熱を辿るように右手を見ると、ルーチェに握られている。どうやらヴィルジールの右手を握ったまま眠っているようだ。

(……光を灯した者がまことの聖女、か)

 ヴィルジールはルーチェの手を握り返した。そして、反対側の手を伸ばして、ルーチェの髪にそっと触れる。

 ソレイユと同じ、白銀色の髪だ。だがルーチェの髪は元は別の色だった。ヴィルジールの傷を癒した時に、彼女の髪は今の色に染まった。

 ふと、初めてルーチェを見た日のことを思い出す。両手を後ろで縛られ、床に転がされていた時のことを。

 あの日、あの時──ルーチェの髪色は、ヴィルジールの目には黒色に映っていた。それは夢に出てきたソレイユが髪色を変え、消えてしまったあの瞬間と重なる。

「……ひとつも似ていないのに、あの日のお前と重なって見えたのは、何か意味があるのか」

 ヴィルジールは目を閉じた。

 夢の中で少年が見たソレイユは、必死に訴えているようだった。そして剣ともう一つ、布に包まれた何かを少年に渡し、髪色は変わり──彼女は消えた。

 ソレイユとルーチェ。ふたりの共通点は聖女であることと、髪色が変わったことだけだ。ただそれだけなのに、二人が並んだ姿が頭にこびりついて離れない。
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