亡国の聖女は氷帝に溺愛される
 空よりも濃く、海よりも淡い、宝石のような瞳に見つめられている。ルーチェのことを心配していてくれたのか、あるいは他に思うところがあるのか、眉を顰めていた。

「……ヴィルジールさま?」

 ルーチェが首を傾げると、ヴィルジールは目を伏せてからゆっくりと息を吐いた。

「……何だ」

「何だじゃありません。……だって、見ていたではありませんか」

「別に減るものではないだろう」

「へ、減ります……」

 ルーチェは粥を口に運ぶ手を止め、ぷうと頬を膨らませる。

 ヴィルジールは唇を横に引きながら目元を和らげると、ルーチェの髪を一房、指先で絡めとった。

「悪かったな。目の前で倒れられたものだから、ちゃんと生きているか確認したくなった」

 ルーチェの髪を弄るヴィルジールの声音は、今まで聞いたことのないくらい柔らかかった。

 ルーチェは逃げるように目を逸らし、スプーンを持つ手に力を込める。

 生きていることを確かめるために、髪に触れるだなんて。触れられているのは髪なのに、そこから溶け出してしまいそうな気がしてならない。

 彼に見つめられると、心臓の動きが早くなって。触れられると、溶けてしまいそうで。優しい声を聞くと、他の音が遠くなる。

 ルーチェがおかしくなってしまったのか、ヴィルジールがそんなふうにさせてくるのか、どちらなのだろう。
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