亡国の聖女は氷帝に溺愛される
「この度はご迷惑をお掛けしました。あれから何日経っているのですか?」

「四日だ」

 ヴィルジールに座るよう促されたので、ルーチェは長ソファの端に腰を掛けた。人ひとり分の距離を空けたところにヴィルジールも座ると、彼は長い脚を組んだ。

「長くなるが、色々と話したいことがある」

 ルーチェは頷いた。

「聞かせてください」

 ヴィルジールはルーチェを一瞥してから、宙を見つめながら語っていった。ルーチェが四日も眠る原因となった、レイチェルという名の聖女と、もうひとりの聖女について。



 このオヴリヴィオ帝国の公爵家の一つ──セントローズ公爵家の当主が、イージス神聖王国の元聖女を名乗る少女・レイチェルを伴い謁見を願い出たのが事の始まりだった。

 その日、ルーチェとヴィルジールは中庭で出逢い、穏やかなひと時を過ごした。ヴィルジールには来客の予定があったが、その客人が実弟であるセシルの為、少しくらいの遅れなら許されるだろうと──ふらりと外に出たそうだ。

 ルーチェの隣で仮眠を取り、眠ってしまったルーチェをとりあえず執務室に運び込むと、セントローズ公爵が来ていると報された。

「あの女性は、セントローズ公爵様という方が連れてこられたのですね」

「ああ。十年も顔を合わせていなかった男が突然来たかと思えば、イージスの聖女を連れてきたと聞いて……取り急ぎ顔を見に行ったのだが」

 ヴィルジールは両手を組むと、長く息を吐いた。
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