亡国の聖女は氷帝に溺愛される
 ルーチェの新しい住まいとなったのは、城の敷地内にあるソレイユ宮と呼ばれる場所だった。二階建てのこの建物には、中に入ると左右に分かれる階段があり、二階には主人用の広い部屋と客間、そして一階には食事をする部屋と浴室、使用人部屋がある。

 この城にいくつかある離宮の中では一番小さいが、一番美しい離宮であるとも云われているそうだ。

「こちらがルーチェ様のお部屋にございます」

 セルカが扉を開ける。先に入るよう促されたので、ルーチェは中へと入った。
 そこは光があふれる美しい部屋だった。

「とても綺麗……」

 感嘆の息を漏らすルーチェに、セルカは前を向いたまま口を開く。

「家具や調度品は白色と菫色で統一するよう、陛下の御指示があったそうです」

 ルーチェは部屋の奥へと進み、大きなガラス扉の前で立ち止まった。少し開いているのか、さらさらと風が入ってきている。透ける二色のカーテンが光を受け、きらきらと煌めいていた。

 そっと扉を押すと、広々としたテラスに出る。真下には先ほど散策した庭園と門があり、その奥には銅像がある広場が、更に奥には城の心臓部とも言える居館が見えた。

「ルーチェ様。こちらをご覧ください」

 セルカに呼ばれて中へと戻ると、天蓋付きベッドの上で美しいドレスが裾を広げていた。その傍にあるメッセージカードを手に取ると、贈り主の名は書いていないものの、特定するには十分すぎる言葉が綴られている。
 ルーチェは瞬くように微笑った。
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