兄弟の溺愛に堕ちて
でも——胸の奥がじんわりと熱くなる。

一真さんが、私のことを弟の蓮さんに話していたなんて。

「そっか、付き合ってないんだ。」

「えっ?」思わず聞き返す。

「何でもない、こっちのこと。」

蓮さんは軽く笑ってごまかすと、再びコピー機の前に立った。

ガタン、ウィーン……と機械が紙を吐き出す音。

蓮さんはそれを素早く受け取り、きっちりと揃えて束ねる。

流れ作業のようでいて、その動きには無駄がない。

手先が器用で、冊子の角は一枚もずれていなかった。

「仲いいんですね。社長と。」

何気なく言うと、蓮さんは手を止め、少し遠くを見るような目をした。

「まあね。兄貴は俺にとって、たった一人の兄だから。」

その声には温かさと、ほんの少しの寂しさが混じっていた。

異母兄弟だと聞いた時は驚いたけれど、こうして仕事中でも自然に笑い合える二人の姿を見ると、その絆は血の濃さじゃなく、積み重ねた時間が作ったものなんだと分かる。
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