兄弟の溺愛に堕ちて
「す、すみません!」

慌ててかがみ込む私。

「いや、こっちこそ変なこと聞いてごめん。」

蓮さんも同じようにしゃがみ込み、手際よく冊子を拾い集めてくれる。

「兄貴さ、たまにしか連絡よこさないんだけど、美咲さんのことは必ず書いてくるんだよ。」

「えっ……」思わず顔を上げてしまった。

あの一真さんが? 私のことを、わざわざ……?

信じられない気持ちと、胸の奥がじんわり熱くなる感覚が同時に押し寄せる。

「いい意味で気に入ってるっていうか、信頼してるっていうか。兄貴があんな風に人の話をするの、俺は初めて聞いた。」

蓮さんはそう言って、何でもないことのように笑った。

けれど私には、その一言が胸の奥に深く刺さった。

信頼——それだけなのか、それとも……。

分からないからこそ、余計に気持ちは揺れてしまう。

「だから、兄貴の特別な人なのかなって思ったけれど、違った?」

私は小さくうなずいた。確かに恋人ではない。
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