兄弟の溺愛に堕ちて
差し出されたフォークに戸惑いながらも口にすると、思わず笑みがこぼれた。

「……おいしい。」

「だろ?美咲が笑うと、俺まで嬉しくなる。」

優しい言葉と真っ直ぐな視線に、胸がくすぐったくて苦しい。

私はこの夜を忘れられなくなる予感がしていた。

ホテル最上階のバーは、静かなジャズが流れていた。

窓の外には宝石のような夜景が広がり、都会のざわめきが嘘みたいに遠い。

カシスオレンジを口に含むと、ほんのり甘くて、でも少し大人びた苦味が広がった。

「オシャレな味がします……」

そう呟くと、蓮さんはグラスを片手に、私を覗き込むように笑った。

「なあ、美咲。この後、時間ある?」

その低い声に心臓が跳ねる。

「え……はい。何か、まだ?」

自分でも情けないほど声が震えてしまう。

蓮さんはクスッと笑った。

「この間、俺が好きだって言ったこと、覚えてる?」

「……忘れられるわけ、ないです。」
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