兄弟の溺愛に堕ちて
「蓮さん……私……」

気持ちを言おうとした瞬間、彼の手がそっと私の手を包んだ。

「返事は今じゃなくていい。けど、美咲の心に少しでも俺が入り込めたなら、それだけで十分だ。」

真剣な眼差しに射抜かれて、息が詰まりそうになった。

逃げ場なんて、もうなかった。

「美咲、これ。」

蓮さんが胸ポケットからカードキーを取り出した。

「……あの、これって……」

問い返す私の手に、彼の大きな手が重なる。

「ホテルの部屋、取った。」

その一言で、心臓が跳ね上がった。

頭の中が真っ白になる。

行ったら――絶対に、蓮さんに抱かれる。

「私……そういうことは、初めてのデートでしていなくて。」

声が震える。精一杯の拒絶なのに、強くも言えなかった。

蓮さんの指が、私の手をさらに強く包み込む。

「分かってる。でも……少しでも俺に心が向いてるなら、来てほしい。」
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