兄弟の溺愛に堕ちて
その眼差しは、真剣で、逃げ場なんてなかった。

欲望だけじゃない、私を想う気持ちがそこにあった。

胸の奥で「行きたい」という声と「ダメだ」という声がぶつかり合う。

――一真さんの影がよぎる。でも、今この瞬間、私を欲しがっているのは蓮さんだった。

「……蓮さん……」

気づけば、カードキーを持つ彼の手を、握り返していた。

「どうして?」

胸の奥から言葉が漏れていた。

「どうして、そこまで……私のこと……」

問いかけた瞬間、蓮さんの腕が私を抱き寄せた。

体温が伝わってきて、逃げ場がない。

「美咲だからだよ。」

低く落ちる声に、胸の鼓動が一層早まる。

きっと今なら、彼に触れられなくても音だけで伝わってしまう。

「他の女には、しない。」

その言葉が、まるで鎖みたいに私を縛る。

私はそっと顔を上げ、蓮さんを見た。

真剣な瞳がまっすぐ私を射抜く。
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