兄弟の溺愛に堕ちて
その隣には、同じ秘書課の佐伯さんが控えめに立っていた。

「付き合ってくれるっていうからさ。」

蓮さんが笑うと、佐伯さんは肩をすくめて明るく答えた。

「まさか取締役を一人で行かせることなんてできなくて。」

そうか、と私は思う。

蓮さんは誰とでも分け隔てなく接して、自然に人を惹きつけてしまう人。

だからこうして、気軽に誰かと並んで歩く姿がよく似合う。

——そう。私だけが特別じゃない。

胸の奥に小さな棘が刺さったようで、視線を落としてしまう。

その時。

「美咲だけだよ。」

耳元に低く囁かれて、思わず顔を上げた。

すぐ近くにある蓮さんの瞳が、悪戯っぽく光っている。

「……っ!」

ドクンと心臓が高鳴る。

冗談にしては、あまりにも近い距離。

頬に熱が走るのを感じた瞬間、蓮さんはニヤリと口角を上げた。

「じゃあ、また。」
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