赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
「……あなた、なんでそんなに冷静なのよ」
シエラが呆れと嘆きがない混ぜになった声で私に尋ねる。
「嘆いても状況が好転しないと知っているからよ」
子どもの時からそうだった。声が枯れるまで泣いたところで誰も助けてなんてくれない。結局自分でなんとかするしかないのだ、と気づいてからは涙を流すことはなくなった。
「シエラも座ってないで何か対策を錬ったら? 大人しく殺されるつもりなら別に構わないけれど」
殺される、という単語にシエラの顔から色が消える。だが、一向に動きそうにない。
「ああ、さっき交渉は決裂したのだから私の助けは期待はしないでね。私だって自分のことで手一杯なの」
わざとシエラを挑発し、丁寧に追い討ちをかけるも、
「大丈夫、よ。私が死ぬなんてありえないわ。だって、私は帝国で高貴な血を引いているリタ家の娘なのよ」
譫言のように返ってくるのは思考を放棄したセリフだけ。
おそらくシエラはこのままだと無抵抗のまま殺されてしまうだろう。
殺されるその瞬間まで、何故自分がこんな目に遭うのかその理由も分からぬままに。
シエラを見捨てるのは簡単だ。今までされたことを思えば、助けてやる義理もない。
いっそのことシエラを囮にした方が私の生存率は上がるだろう。
だけど、もしそうやってシエラを見捨て宮廷に帰ったなら……。と考え、私は無意識に髪に手をやりそこにダリアの花がないことに気づく。
植物園に行った後、セルヴィス様はあの時くれたダリアに良く似たダリアの簪を誂えて私の髪に挿してくれた。
攫われる直前、私はそれを今日着る予定だった衣装掛けの下に投げ入れてきた。
『赤色は見ていると元気が出る。君の色だ』
私だけの赤の花。
それはセルヴィス様からの信頼の証。
「……絶対に失くしたくないわ」
ぽつりと漏れた自分の言葉で私の覚悟が決まる。
もしここでシエラを見捨てたら、きっと私はセルヴィス様の紺碧の瞳を二度とまともに見れなくなる。
他の誰にどう思われても構わない。
でも契約妃でしかない私の身を案じ、私のために怒ってくれたセルヴィス様にだけは失望されたくない。
ならば私は、いつも通り私に取れる最善を選ぼうと思う。
「助けなんてこないわ」
キッパリと言い切った私の言葉に息を呑む気配を感じる。
「何度でも言うけど、あなたはここがどこかも何故自分が攫われたのかも聞かされていないのでしょう? その時点であなたが切り捨てられたのは明白」
「そん、なわけ」
「ざーんねーん♪ そんなわけ、あるの」
私は子どものような無邪気な笑顔浮かべ、シエラに近づき顎に指を添えると強制的にこちらを向かせ、
「先の茶会での毒殺未遂に加え、大事な宴を控えた時期に私に掴み掛かってきた失態。ただでさえ皇帝陛下に睨まれているというのに、謹慎を言い渡していたにも関わらず抜け出したあなたを果たしてリタ侯爵家は探してくれるかしら?」
彼女が目をそらそうとした現実を並べる。
「ふふ、本当は自分でもわかっているのでしょう?」
暴君王女らしい尊大さを意識して、
「よかったじゃない。加害者よりも事件の被害者として処理される方がよほど世間の印象はいいわ。おめでとう、望み通りかわいそうなヒロインの誕生ね!」
この騒動を聞きつけたときのリタ侯爵家の結論予想を彼女の耳元でささやく。
そして、残念ながらこれはありえないことではない。
シエラの後宮入りが絶望的なら尚更。
事件に便乗して、娘を切り捨てる。
非情に思えるかもしれないが、家門に連なる全ての人間の首を切られるよりよほどマシな選択だろう。
「……衛兵を、呼んだのでしょう? 今頃あなたが居ないと宮廷内で騒ぎになっているはずよ。陛下の寵妃なら最優先で」
震える声でそう尋ねたシエラに、
「衛兵は呼んでないわ」
私はそう言って止めを刺した。
シエラが呆れと嘆きがない混ぜになった声で私に尋ねる。
「嘆いても状況が好転しないと知っているからよ」
子どもの時からそうだった。声が枯れるまで泣いたところで誰も助けてなんてくれない。結局自分でなんとかするしかないのだ、と気づいてからは涙を流すことはなくなった。
「シエラも座ってないで何か対策を錬ったら? 大人しく殺されるつもりなら別に構わないけれど」
殺される、という単語にシエラの顔から色が消える。だが、一向に動きそうにない。
「ああ、さっき交渉は決裂したのだから私の助けは期待はしないでね。私だって自分のことで手一杯なの」
わざとシエラを挑発し、丁寧に追い討ちをかけるも、
「大丈夫、よ。私が死ぬなんてありえないわ。だって、私は帝国で高貴な血を引いているリタ家の娘なのよ」
譫言のように返ってくるのは思考を放棄したセリフだけ。
おそらくシエラはこのままだと無抵抗のまま殺されてしまうだろう。
殺されるその瞬間まで、何故自分がこんな目に遭うのかその理由も分からぬままに。
シエラを見捨てるのは簡単だ。今までされたことを思えば、助けてやる義理もない。
いっそのことシエラを囮にした方が私の生存率は上がるだろう。
だけど、もしそうやってシエラを見捨て宮廷に帰ったなら……。と考え、私は無意識に髪に手をやりそこにダリアの花がないことに気づく。
植物園に行った後、セルヴィス様はあの時くれたダリアに良く似たダリアの簪を誂えて私の髪に挿してくれた。
攫われる直前、私はそれを今日着る予定だった衣装掛けの下に投げ入れてきた。
『赤色は見ていると元気が出る。君の色だ』
私だけの赤の花。
それはセルヴィス様からの信頼の証。
「……絶対に失くしたくないわ」
ぽつりと漏れた自分の言葉で私の覚悟が決まる。
もしここでシエラを見捨てたら、きっと私はセルヴィス様の紺碧の瞳を二度とまともに見れなくなる。
他の誰にどう思われても構わない。
でも契約妃でしかない私の身を案じ、私のために怒ってくれたセルヴィス様にだけは失望されたくない。
ならば私は、いつも通り私に取れる最善を選ぼうと思う。
「助けなんてこないわ」
キッパリと言い切った私の言葉に息を呑む気配を感じる。
「何度でも言うけど、あなたはここがどこかも何故自分が攫われたのかも聞かされていないのでしょう? その時点であなたが切り捨てられたのは明白」
「そん、なわけ」
「ざーんねーん♪ そんなわけ、あるの」
私は子どものような無邪気な笑顔浮かべ、シエラに近づき顎に指を添えると強制的にこちらを向かせ、
「先の茶会での毒殺未遂に加え、大事な宴を控えた時期に私に掴み掛かってきた失態。ただでさえ皇帝陛下に睨まれているというのに、謹慎を言い渡していたにも関わらず抜け出したあなたを果たしてリタ侯爵家は探してくれるかしら?」
彼女が目をそらそうとした現実を並べる。
「ふふ、本当は自分でもわかっているのでしょう?」
暴君王女らしい尊大さを意識して、
「よかったじゃない。加害者よりも事件の被害者として処理される方がよほど世間の印象はいいわ。おめでとう、望み通りかわいそうなヒロインの誕生ね!」
この騒動を聞きつけたときのリタ侯爵家の結論予想を彼女の耳元でささやく。
そして、残念ながらこれはありえないことではない。
シエラの後宮入りが絶望的なら尚更。
事件に便乗して、娘を切り捨てる。
非情に思えるかもしれないが、家門に連なる全ての人間の首を切られるよりよほどマシな選択だろう。
「……衛兵を、呼んだのでしょう? 今頃あなたが居ないと宮廷内で騒ぎになっているはずよ。陛下の寵妃なら最優先で」
震える声でそう尋ねたシエラに、
「衛兵は呼んでないわ」
私はそう言って止めを刺した。