赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
「この毒薬は葬りされなかったのか?」
「危険過ぎて、下手に処理できないんです。それこそ聖女様の浄化の力でもない限り」
だが、現在この世界で聖女は発見されていない。
いつか時を経て"浄化"できる日が来るまで、封じる以外にないのだ。
「なるほどな」
ふむ、と頷いたセルヴィス様は考え込むように瓶を手に取る。
「黙っていて、すみませんでした。クローゼアの売国の件、考え直されますか?」
検討する、とは言ってくれたけれどこんな危ない不良債権付きでは難しいかもしれない。今更プランを練り直す時間もないし、と困る私に、
「ふっ、いつもの強気はどうした?」
ポンっと、大きな手が落ちて来る。
「むしろ、そんな優秀な薬師がいるなら興味が湧く。君も知っている通り、俺は厄介な体質だしな」
「満月の夜のこと、ですか」
「ああ。獣人の血のせいで、毎度満月の夜が苦痛で仕方ない」
確かにとても苦しそうだった。
私の作った薬で多少抑えられるとしても、もう少しコントロールできた方が不便は少ないだろう。
「君を育てた師なら頼りになるだろう」
セルヴィス様にそう言われ、私はぱぁぁぁーと表情を明るくする。
「先生なら、きっとなんとかしてくれますわ! 先生はとってもとっても優秀なのです。先生の研究は素晴らしいものばかりですが、植物学にも精通していて……って陛下?」
サーシャ先生を褒められて調子に乗った私が先生の素晴らしさを熱弁していると、何故かセルヴィス様がにこにこと機嫌良さそうな顔で私を見つめていて。
「いや、君は自分が褒められるより自分が好きな相手が褒められる時の方がいい顔をするなと思って」
くくっと喉で笑った後、
「だが、妬けるな。俺も君にそれくらい想われたい」
少し拗ねたような表情でぽつりとそんな事を漏らした。
「なっ!? か、揶揄わないでくださいませっ」
「いや? 割と本気だが?」
じーっと私を見つめる期待に満ちた紺碧の瞳。
一体何を求められているのか、と考えるまでもなく分かってしまって。
「……セルヴィス様」
私は恐れ多くも彼の名前を口にして、そっとセルヴィス様に手を伸ばし彼の服を掴む。
「なんだろうか?」
私を覗き込むように視線を合わせ優しい声でそう尋ねるセルヴィス様。
近い距離に、否が応でも私の心臓は跳ねる。
「ヴィー、いつも私を助けてくれてありがとう」
「どういたしまして」
綺麗な顔で満足気に笑い私の手を取り頬を寄せる。
そんなセルヴィス様は、黒狼の姿の時と変わらなくて、反射的に手を伸ばしその柔らかで艶のある黒髪をそっと撫でながら、どうか私の心音が彼に聞こえませんように、と願った。
「危険過ぎて、下手に処理できないんです。それこそ聖女様の浄化の力でもない限り」
だが、現在この世界で聖女は発見されていない。
いつか時を経て"浄化"できる日が来るまで、封じる以外にないのだ。
「なるほどな」
ふむ、と頷いたセルヴィス様は考え込むように瓶を手に取る。
「黙っていて、すみませんでした。クローゼアの売国の件、考え直されますか?」
検討する、とは言ってくれたけれどこんな危ない不良債権付きでは難しいかもしれない。今更プランを練り直す時間もないし、と困る私に、
「ふっ、いつもの強気はどうした?」
ポンっと、大きな手が落ちて来る。
「むしろ、そんな優秀な薬師がいるなら興味が湧く。君も知っている通り、俺は厄介な体質だしな」
「満月の夜のこと、ですか」
「ああ。獣人の血のせいで、毎度満月の夜が苦痛で仕方ない」
確かにとても苦しそうだった。
私の作った薬で多少抑えられるとしても、もう少しコントロールできた方が不便は少ないだろう。
「君を育てた師なら頼りになるだろう」
セルヴィス様にそう言われ、私はぱぁぁぁーと表情を明るくする。
「先生なら、きっとなんとかしてくれますわ! 先生はとってもとっても優秀なのです。先生の研究は素晴らしいものばかりですが、植物学にも精通していて……って陛下?」
サーシャ先生を褒められて調子に乗った私が先生の素晴らしさを熱弁していると、何故かセルヴィス様がにこにこと機嫌良さそうな顔で私を見つめていて。
「いや、君は自分が褒められるより自分が好きな相手が褒められる時の方がいい顔をするなと思って」
くくっと喉で笑った後、
「だが、妬けるな。俺も君にそれくらい想われたい」
少し拗ねたような表情でぽつりとそんな事を漏らした。
「なっ!? か、揶揄わないでくださいませっ」
「いや? 割と本気だが?」
じーっと私を見つめる期待に満ちた紺碧の瞳。
一体何を求められているのか、と考えるまでもなく分かってしまって。
「……セルヴィス様」
私は恐れ多くも彼の名前を口にして、そっとセルヴィス様に手を伸ばし彼の服を掴む。
「なんだろうか?」
私を覗き込むように視線を合わせ優しい声でそう尋ねるセルヴィス様。
近い距離に、否が応でも私の心臓は跳ねる。
「ヴィー、いつも私を助けてくれてありがとう」
「どういたしまして」
綺麗な顔で満足気に笑い私の手を取り頬を寄せる。
そんなセルヴィス様は、黒狼の姿の時と変わらなくて、反射的に手を伸ばしその柔らかで艶のある黒髪をそっと撫でながら、どうか私の心音が彼に聞こえませんように、と願った。