赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
「それにしても、この短期間でアルカ嬢は沢山の魔道具を作られたのですね。他にも何か研究をされているのですか?」
しんみりした空気を変えようと水を向ける私に、
「ああ、これらは元々考えてたやつでお遊び的なものだよ」
アルカも仕切り直しとばかりに成果を話しはじめる。
「これでも魔塔に入ってからは真面目な奴にも取り組んでいるのだよ? 例えば聖女の遺した聖遺物の解析とか」
その目はとても楽しげで、実に知識欲に飢えた魔術師らしい。
セルヴィス様がアルカを皇后の椅子に縛らず国外に出せるよう働きかけたのは最適解だったんだろうな、と彼女の話を聞きながら思う。
「あと、最近魔塔でホットな話題としてはリープ病への魔力アプローチ、かな」
不意にアルカの口から思いがけない単語が聞かれ、私は驚き息を呑む。
「……えっ?」
リープ病。
それは私のお母様を死に追いやり、そして今なおこの身体を蝕んでいる不治の病の名前。
それを、魔塔で研究している?
「おや、そんなに意外かい?」
「だって……魔術師には無縁の病でしょう? それに、魔力はリープ病患者にとって毒なのに」
「まぁ、確かにそう言われているね。だが、それを突き詰めて確かめた者はいるのかい?」
アルカの問いに私は沈黙し、知見を並べる。
この世界の人間は多かれ少なかれ魔力を帯びているけれど、体内にある魔力を魔法として発現させ能力として使用できるものは少数派で。
さらに高度な魔法を生み出せる魔術師と呼ばれる人間は極端に少ない。
魔法の使えないいわゆる"普通の人間"にとって多過ぎる魔力は毒にしかならず、それがリープ病発症のトリガーの一つではないか、というのが定説。
つまり高魔力保持者である魔術師達はそもそもこの病気にかかることはなく、そしてリープ病発症者にとって"魔力"を帯びたモノに近づくことは寿命を更に縮める自殺行為でしかない。
お母様がリープ病を発症された時から、様々な手を尽くし沢山文献を読み漁ったのでよく覚えている。
身を守るため、身の丈以上の魔道具を使い過ぎた。だから私がリープ病を発症したのは自業自得だし、その後も遠ざけるどころか積極的に"魔力"に触れてきた私が、通常より早く病状が悪化し死ぬのは仕方ない。
そう、思っていたのに。
「毒を持って毒を制す、ってこと?」
もしかしたら、まだ世に出ていない知見があるのかもしれない。
私は声が震えそうになるのを抑えてアルカに尋ねる。
「そういうアプローチもあるんじゃないか、って一説。ただまぁ、リープ病に関しては実験協力者が見つからないけど」
みんな早死にしたくはないからね、と肩を竦める。
それはそうだろう。
リープ病を発症したら極力魔力から遠ざかった生活をし、進行を少しでも遅らせようとするのが普通だ。
「イザベラ妃、もしかしてリープ病患者に心当たりが?」
「……母が。内緒にしてくださいね」
当事者だ、とはいえず私はまだ公式的には療養中となっているお母様の名を上げる。
仮にアルカの口からお母様がリープ病だと漏れても公の場から退いて5年。そう影響はないだろう。
大丈夫、と自分に言い聞かせた私はゆっくり息を吐き出し、窓の外を見る。気づけばもう、日が暮れ始めていた。
しんみりした空気を変えようと水を向ける私に、
「ああ、これらは元々考えてたやつでお遊び的なものだよ」
アルカも仕切り直しとばかりに成果を話しはじめる。
「これでも魔塔に入ってからは真面目な奴にも取り組んでいるのだよ? 例えば聖女の遺した聖遺物の解析とか」
その目はとても楽しげで、実に知識欲に飢えた魔術師らしい。
セルヴィス様がアルカを皇后の椅子に縛らず国外に出せるよう働きかけたのは最適解だったんだろうな、と彼女の話を聞きながら思う。
「あと、最近魔塔でホットな話題としてはリープ病への魔力アプローチ、かな」
不意にアルカの口から思いがけない単語が聞かれ、私は驚き息を呑む。
「……えっ?」
リープ病。
それは私のお母様を死に追いやり、そして今なおこの身体を蝕んでいる不治の病の名前。
それを、魔塔で研究している?
「おや、そんなに意外かい?」
「だって……魔術師には無縁の病でしょう? それに、魔力はリープ病患者にとって毒なのに」
「まぁ、確かにそう言われているね。だが、それを突き詰めて確かめた者はいるのかい?」
アルカの問いに私は沈黙し、知見を並べる。
この世界の人間は多かれ少なかれ魔力を帯びているけれど、体内にある魔力を魔法として発現させ能力として使用できるものは少数派で。
さらに高度な魔法を生み出せる魔術師と呼ばれる人間は極端に少ない。
魔法の使えないいわゆる"普通の人間"にとって多過ぎる魔力は毒にしかならず、それがリープ病発症のトリガーの一つではないか、というのが定説。
つまり高魔力保持者である魔術師達はそもそもこの病気にかかることはなく、そしてリープ病発症者にとって"魔力"を帯びたモノに近づくことは寿命を更に縮める自殺行為でしかない。
お母様がリープ病を発症された時から、様々な手を尽くし沢山文献を読み漁ったのでよく覚えている。
身を守るため、身の丈以上の魔道具を使い過ぎた。だから私がリープ病を発症したのは自業自得だし、その後も遠ざけるどころか積極的に"魔力"に触れてきた私が、通常より早く病状が悪化し死ぬのは仕方ない。
そう、思っていたのに。
「毒を持って毒を制す、ってこと?」
もしかしたら、まだ世に出ていない知見があるのかもしれない。
私は声が震えそうになるのを抑えてアルカに尋ねる。
「そういうアプローチもあるんじゃないか、って一説。ただまぁ、リープ病に関しては実験協力者が見つからないけど」
みんな早死にしたくはないからね、と肩を竦める。
それはそうだろう。
リープ病を発症したら極力魔力から遠ざかった生活をし、進行を少しでも遅らせようとするのが普通だ。
「イザベラ妃、もしかしてリープ病患者に心当たりが?」
「……母が。内緒にしてくださいね」
当事者だ、とはいえず私はまだ公式的には療養中となっているお母様の名を上げる。
仮にアルカの口からお母様がリープ病だと漏れても公の場から退いて5年。そう影響はないだろう。
大丈夫、と自分に言い聞かせた私はゆっくり息を吐き出し、窓の外を見る。気づけばもう、日が暮れ始めていた。