赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
「嫌って」

「嫌なものを嫌と言って何が悪いのよ。そもそも友人とは一方的に解消できる関係ではないでしょ」

 私が嫌と言ったら嫌なのよ、と腰に手を当て当然のように言い放つシエラ。

「アルカが何を気にしているのか分からないわ。だって、アルカは私のこと大好きじゃない。友達やめる意味が分からないわ」

「それは……」

「私なら、嫌いな相手のためにわざわざ足を運ばない。心配もしないし、謝らない」

「私が言うのもなんだが、それはそれでどうかと思うぞ?」

「だってそうでしょう?」

 きょとんとした顔のシエラは、

「私、あんまり頭がいい方じゃないけど。アルカが超絶面倒くさがりだってことくらいは知ってるわ。そのアルカが友達辞めたくて私に会いにくる? ないわね」

 天変地異が起きてもないわよ、と言い切る。

「面倒なら放っておけばいいじゃない。昔はそうだった。でも、今は違うわ。研究大好きで面倒くさがりのアルカがわざわざ時間を作って帝国まで足を運んだ。アルカが心配したのは陛下の寵妃であるイザベラのこと? 違うでしょ?」

 はじまりが家同士の利害で結びつけられた縁だったとしても。
 そこには確かに互いを思い、理解し合うだけの時間が流れていて。
 確固たる信頼で結びついたその絆は簡単には切れないのだろう。

「それに、私も今は陛下に嫁ぐだけが侯爵家や帝国のためにできる事じゃない、って思ってる。だから、アルカも私もお互い嫌ってないのに、友達やめる理由なくない?」

 ほらね、解決! とケロッと言い切るシエラ。

「ふふっ、ホント、変わらないなぁ。シエラは」

 アルカは拍子抜けしたような、それでいて安堵したような表情を浮かべる。
 落ち着くところに落ち着いたか、と察した私に、

「イザベラ妃、シエラを頼みます。貴族にしては素直過ぎるけど、根はいい子なんです。ちょっとおバカな子なだけで」

 そう言ってアルカは頭を下げる。
 なるほど、シエラの保護者はグレイスだけではなかったか、と悟った私は、

「頼まれても困るわよ」

 ドキッパリとアルカにNOを言い放つ。

「女官見習いだというのに、お茶もまともに淹れられずに主の手を煩わせるし、情報収集もできないし、短絡的だし?」

 手がかかるったらありはしないわと肩を竦めると、

「ちょっと!! さ、最近はこれでもお茶を淹れるのも多部署との調整も頑張ってるわよ!?」

 とシエラから抗議の声が上がる。
 それを鼻で嗤った私は、

「私の女官としてはまだまだ、よ。全然足りない。すぐ主人に楯突くし。誰かさん達が甘やかしたせいで、ホントこれからの躾が大変大変」

 やれやれとオーバー気味に首を振る私とシエラのやり取りをポカーンと見ているアルカに、

「私、子守りをするほど暇じゃないの。だからアルカ嬢、気になるならあなたが自分で離宮まで見に来なさい」

 と命じる。

「あと、畏まらなくていいわ。堅苦しいの、嫌いなの。私も今後はアルカと呼ぶから」

 友人が友人宅を訪ねるのはなんら不思議ではないでしょう?
 そう促せば、私の言葉の意味を理解したアルカが、

「ああ、承知した」

 と柔らかく笑った。
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