赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
「ふっ、こんな子ども騙しで一体何をしようというの?」
ぶっかけられた液体からは薬液の臭いはしない。
シエラにも変化がないところから少なくとも毒ではないと判断したグレイスは冷静に彼女を問いただす。
「さすがね、シエラ。バッチリお客様をご招待できたわね」
だが、動じる様子の中彼女は、パチパチと手を叩きシエラに賞賛の言葉を向け、
「さて、グレイス。あなたを私の"お茶会"にご招待しましょう。大人しく従ってくださる?」
グレイスにはお願いという形の命令を下す。
「火薬がダメになったくらいで随分余裕じゃない」
これで勝ったつもり? と言葉を紡ぐグレイスは、
「私が何の手も打っていないとでも?」
挑発に乗ることなく涼しい態度を崩さない。
実際、2手3手と保険をかけておくのは当たり前なのだろうと天色の瞳にグレイスを映しながら彼女はそんな事を考える。
グレイスを捕らえたとしてもローウェンファミリアは無くならないし、これから起きる悲劇は覆らない。
だけど、それでは困る。
「そうでしょうね。あなたは、ね? でもそれはコチラも同じこと」
ふふっと笑った彼女は、
「アルカは随分と面白く、大胆ね。国宝級の魔道具を臆せず解体して、好きなの髪色に変わるように術式を改変したり、時刻指定でバケツをひっくり返すカラクリを作ったり」
警戒心を解かないグレイスに静かに語りかける。
「そうそう、知ってる? アルカったら今褐色美人になっているの。夏の日の光を人工的に再現する魔道具を作ったのですって」
話の行き着く先が読めず、警戒心を解かないグレイスを見ながら、彼女はすっと天井を指差す。
「じゃあコレは知ってるかしら? 夏の日差しに柑橘類の成分が加わるとその作用が過剰なほどに引き起こされる、って」
柑橘類、という言葉に反応しグレイスはバッとシエラの顔を見る。
深く厚手のフードを被っていた自分とは違い直にライムのエキスを浴びたシエラを。
「大丈夫。仮に光毒に侵され、火傷で爛れたとしても私は気にしないわ。侍女として重用してあげるから安心して?」
クスリと笑みを漏らした彼女を見てグレイスは悟る。
シエラを人質にして脅されているのだ、と。
彼女はきっと気づいている。
グレイスが友人達を正妃の座から蹴落とした本当の理由に。
これみよがしに高らかとスイッチがあげられる。
おそらくそれを押せば天井に仕掛けてあるアルカの魔道具が発動するのだろう。
光が部屋全体的に照射されたら逃げ場などない。ましてや薄着で直にびしょ濡れになっているシエラには避ける手立てなんて一切ない。
「離しなさいっ!!」
「絶対離さない」
「バカシエラ! このままじゃ」
「絶対、離さないわっ!!」
だというのに彼女は手を離そうとしない。
その目を見てシエラは全て承知の上で自分の手を離さないのだとグレイスは知る。
「……なんでよ、バカっ」
「確かに私、バカだけどっ! でも、手放しちゃダメなものくらい分かるわよ」
真っ直ぐなシエラの瞳を見ながらぐっと息を飲んだグレイスの紫紺の瞳が揺らぐ。
「さて、カウントダウンといきましょうか。3、2、1」
2人の友情を眺めながら無情にもカウントダウンをはじめた彼女がボタンを押す直前。
「待ってっ!!」
ぎゅっとシエラを降り注ぐ光から庇うように抱きしめたグレイスは、
「お願いだから、シエラに手を出さないで」
そう言って彼女に懇願する。
「それはあなたの出方次第よ」
暴君王女らしい冷たく楽しげな表情を浮かべた彼女は、
「さぁ、交渉の時間よ」
そう言って着席を促した。
ぶっかけられた液体からは薬液の臭いはしない。
シエラにも変化がないところから少なくとも毒ではないと判断したグレイスは冷静に彼女を問いただす。
「さすがね、シエラ。バッチリお客様をご招待できたわね」
だが、動じる様子の中彼女は、パチパチと手を叩きシエラに賞賛の言葉を向け、
「さて、グレイス。あなたを私の"お茶会"にご招待しましょう。大人しく従ってくださる?」
グレイスにはお願いという形の命令を下す。
「火薬がダメになったくらいで随分余裕じゃない」
これで勝ったつもり? と言葉を紡ぐグレイスは、
「私が何の手も打っていないとでも?」
挑発に乗ることなく涼しい態度を崩さない。
実際、2手3手と保険をかけておくのは当たり前なのだろうと天色の瞳にグレイスを映しながら彼女はそんな事を考える。
グレイスを捕らえたとしてもローウェンファミリアは無くならないし、これから起きる悲劇は覆らない。
だけど、それでは困る。
「そうでしょうね。あなたは、ね? でもそれはコチラも同じこと」
ふふっと笑った彼女は、
「アルカは随分と面白く、大胆ね。国宝級の魔道具を臆せず解体して、好きなの髪色に変わるように術式を改変したり、時刻指定でバケツをひっくり返すカラクリを作ったり」
警戒心を解かないグレイスに静かに語りかける。
「そうそう、知ってる? アルカったら今褐色美人になっているの。夏の日の光を人工的に再現する魔道具を作ったのですって」
話の行き着く先が読めず、警戒心を解かないグレイスを見ながら、彼女はすっと天井を指差す。
「じゃあコレは知ってるかしら? 夏の日差しに柑橘類の成分が加わるとその作用が過剰なほどに引き起こされる、って」
柑橘類、という言葉に反応しグレイスはバッとシエラの顔を見る。
深く厚手のフードを被っていた自分とは違い直にライムのエキスを浴びたシエラを。
「大丈夫。仮に光毒に侵され、火傷で爛れたとしても私は気にしないわ。侍女として重用してあげるから安心して?」
クスリと笑みを漏らした彼女を見てグレイスは悟る。
シエラを人質にして脅されているのだ、と。
彼女はきっと気づいている。
グレイスが友人達を正妃の座から蹴落とした本当の理由に。
これみよがしに高らかとスイッチがあげられる。
おそらくそれを押せば天井に仕掛けてあるアルカの魔道具が発動するのだろう。
光が部屋全体的に照射されたら逃げ場などない。ましてや薄着で直にびしょ濡れになっているシエラには避ける手立てなんて一切ない。
「離しなさいっ!!」
「絶対離さない」
「バカシエラ! このままじゃ」
「絶対、離さないわっ!!」
だというのに彼女は手を離そうとしない。
その目を見てシエラは全て承知の上で自分の手を離さないのだとグレイスは知る。
「……なんでよ、バカっ」
「確かに私、バカだけどっ! でも、手放しちゃダメなものくらい分かるわよ」
真っ直ぐなシエラの瞳を見ながらぐっと息を飲んだグレイスの紫紺の瞳が揺らぐ。
「さて、カウントダウンといきましょうか。3、2、1」
2人の友情を眺めながら無情にもカウントダウンをはじめた彼女がボタンを押す直前。
「待ってっ!!」
ぎゅっとシエラを降り注ぐ光から庇うように抱きしめたグレイスは、
「お願いだから、シエラに手を出さないで」
そう言って彼女に懇願する。
「それはあなたの出方次第よ」
暴君王女らしい冷たく楽しげな表情を浮かべた彼女は、
「さぁ、交渉の時間よ」
そう言って着席を促した。