赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
「どうして、ドロシーが身分を隠して辺境地まで出向いていたと思う?」
セルヴィス様の調査報告にあった内容にはドロシーが辺境地を訪れた経緯が書かれていた。
ドロシーはグレイスが何かを隠していると察していたのだろう。そしてもしもの時、グレイスを助けられるようにと己を鍛えるために単身で辺境に出向いていたのだ。
「なぜ、アルカが周りにガラクタだと一蹴されても魔道具を作り続けていたと思う?」
知的好奇心の多いアルカ。
だが、無闇矢鱈と己の欲の為だけに研究していたわけではない。
役に立たないと誰にも見向きされない形で魔道具を制作することで、賢いグレイスに惜しみなく自身の知見を披露していたのだ。
何も語らないグレイスの助けになればと願いを込めて。
「貴族令嬢にとって顔や身体に残る傷は貴族社会で生きるには致命傷になると分かっていてシエラはあなたの手を離さなかった。そんな彼女をあなたは愚かだと思う?」
グレイスを捕まえる手立てとして、光毒の話をシエラに告げた時、彼女は躊躇うことなくその役を引き受けた。
説得に失敗すれば私はシエラごとグレイスに致命傷を負わせるといったけれど、シエラは自信満々にこう言った。
『グレイスは絶対私を見捨てない。だってグレイスは私のこと大好きだもの』
と。
「ねぇ、グレイス。本当に、あなたには味方は誰一人いなかった?」
あなたが何を犠牲にしても守りたいと思った大事な友人達は、あなたが思うよりずっとあなたの事が好きみたいよと告げれば、
「……バカ、じゃないのっ」
グレイスは紫紺の瞳から一筋の涙をこぼし消えそうな声でそう言った。
「そうね。でもあなたの正体を知ってなおあなたのために動いてくれる彼女達との繋がりは紛れもなくあなた自身が築いたものよ」
掛け値なしで真っ直ぐ寄せられた信頼。
それこそが、グレイスが自分を保てた命綱なのだと私は思う。
「グレイス。あなたが感じている恐怖や絶望は私には分からない。だけど、あなたがいう"世界"なんてモノはせいぜいキャメル伯爵の手の届く範囲くらいなモノでしょう」
それはこの世界の全てでは決してないと私は知っている。
「"教唆"した。確たる証拠が提示できなければ帝国法で罪に問う事は難しいでしょう」
だからこそ、ずっと切り捨てられる"偽物"を用意してきた。
裏切らず、従順に遂行するように幼少期から罪の意識を植え付けて。
「小賢しい手を使うそんな小物に負けるほど、セルヴィス様は弱くない」
だが、それももうおしまいだ。
セルヴィス様がこれから作る帝国の未来に悪意を秘めた影は相応しくない。
「もう一度言うわ。あなたはこれから自分の犯した罪をその身を持って償うでしょう。だけどもし、それでもあなたの人生を支配したキャメル一族に一矢報いたいというのなら、私の手を取りなさい。グレイス・ド・キャメル」
私は暴君王女らしい笑みを浮かべ、グレイスにそう命じた。
セルヴィス様の調査報告にあった内容にはドロシーが辺境地を訪れた経緯が書かれていた。
ドロシーはグレイスが何かを隠していると察していたのだろう。そしてもしもの時、グレイスを助けられるようにと己を鍛えるために単身で辺境に出向いていたのだ。
「なぜ、アルカが周りにガラクタだと一蹴されても魔道具を作り続けていたと思う?」
知的好奇心の多いアルカ。
だが、無闇矢鱈と己の欲の為だけに研究していたわけではない。
役に立たないと誰にも見向きされない形で魔道具を制作することで、賢いグレイスに惜しみなく自身の知見を披露していたのだ。
何も語らないグレイスの助けになればと願いを込めて。
「貴族令嬢にとって顔や身体に残る傷は貴族社会で生きるには致命傷になると分かっていてシエラはあなたの手を離さなかった。そんな彼女をあなたは愚かだと思う?」
グレイスを捕まえる手立てとして、光毒の話をシエラに告げた時、彼女は躊躇うことなくその役を引き受けた。
説得に失敗すれば私はシエラごとグレイスに致命傷を負わせるといったけれど、シエラは自信満々にこう言った。
『グレイスは絶対私を見捨てない。だってグレイスは私のこと大好きだもの』
と。
「ねぇ、グレイス。本当に、あなたには味方は誰一人いなかった?」
あなたが何を犠牲にしても守りたいと思った大事な友人達は、あなたが思うよりずっとあなたの事が好きみたいよと告げれば、
「……バカ、じゃないのっ」
グレイスは紫紺の瞳から一筋の涙をこぼし消えそうな声でそう言った。
「そうね。でもあなたの正体を知ってなおあなたのために動いてくれる彼女達との繋がりは紛れもなくあなた自身が築いたものよ」
掛け値なしで真っ直ぐ寄せられた信頼。
それこそが、グレイスが自分を保てた命綱なのだと私は思う。
「グレイス。あなたが感じている恐怖や絶望は私には分からない。だけど、あなたがいう"世界"なんてモノはせいぜいキャメル伯爵の手の届く範囲くらいなモノでしょう」
それはこの世界の全てでは決してないと私は知っている。
「"教唆"した。確たる証拠が提示できなければ帝国法で罪に問う事は難しいでしょう」
だからこそ、ずっと切り捨てられる"偽物"を用意してきた。
裏切らず、従順に遂行するように幼少期から罪の意識を植え付けて。
「小賢しい手を使うそんな小物に負けるほど、セルヴィス様は弱くない」
だが、それももうおしまいだ。
セルヴィス様がこれから作る帝国の未来に悪意を秘めた影は相応しくない。
「もう一度言うわ。あなたはこれから自分の犯した罪をその身を持って償うでしょう。だけどもし、それでもあなたの人生を支配したキャメル一族に一矢報いたいというのなら、私の手を取りなさい。グレイス・ド・キャメル」
私は暴君王女らしい笑みを浮かべ、グレイスにそう命じた。