赤いフードの偽物姫と黒いフードの人外陛下〜敗戦したので売国しに乗り込んだら、何故か溺愛生活始まりました〜
彼女と共にきた騎士達にハリス大公達の連行を指示したオスカーは、
「イザベラ様、長らくのお勤め本当にお疲れ様でした」
そう言ってイザベラを労う。
「セルヴィス様がイザベラ様を勝手に単身でクローゼアに送り出した時は正直この鬼畜ヤロウなんて思いましたが、あのクローゼア王を説き伏せられるなんて流石です!」
今回の城内戦でほとんど負傷者を出さずに済んだのはイザベラの采配によるところが大きい。
クローゼア王から全権代理を得たと手紙を寄越したイザベラからもたらされた情報。
それはハリス大公を捕えるのに大いに役立った。
毒への耐性が強過ぎることや自身の身を顧みない危うさから彼女は母国であまりいい扱いを受けていなかったのではないかと、セルヴィスから話を聞いていたオスカーはクローゼアに渡った彼女を心配していたが、杞憂だったようだ。
本当に良かったとにこやかに笑うオスカーを横目にセルヴィスはスッと剣を抜く。
「って、セルヴィス様、何剣抜いてるんですか!! だって、本当のことじゃないですか!? いつもいつも勝手ばかりして!! 私も怒ってるんですからね! というわけで剣を下げて」
「誰だ、お前は」
鋭い眼光と共に剣の切先が向けられたのはオスカーではなく、そこに佇むイザベラだった。
「セルヴィス様、何を」
柔らかい蜂蜜色の髪にクローゼア王家特有の天色の瞳。紛う事なく、そこにいるのはイザベラだ。
だというのに、オスカーの静止を聞かずセルヴィスは彼女を睨みつけたまま、
「答えろ。イザベラをどこにやった」
冷たく、威圧的に再度目の前にいる彼女にそう問うた。
涼しい顔で佇んでいた彼女は、
「ふっ、あはははっ……あーおっかしい! こんなにあっさり見破られたのは初めてよ!」
親でも見分けられないのにと、腹を抱えて笑い出す。
剣を向けられている状況で何がそんなに楽しいのかは理解しかねるが、取り澄ました顔よりも笑った顔の方がより彼女に近い気がした。
「でも残念、私は間違いなく第一王女イザベラ・カルーテ・ロンドラインよ」
ひとしきり笑ったあと、そう告げた彼女は、
「私の最愛の妹を丁重に扱ってくださったこと、心より感謝いたします」
ふわりと微笑み綺麗なカーテシーをしてみせた。
それは記憶の中の彼女と寸分違わぬ所作であった。
パチリ、パチリとセルヴィスの中で急速にピースが組み上がる。
『そう! そうなのっ!!』
契約妃の話をした日、何故あんなにも暴君王女の手柄を褒められて喜んだのか。
『……沢山、食べさせてあげたかった、な』
カルディアで彼女が誰を思いそうつぶやいたのか。
『……元気、かしら?』
ひとりぼっちの夜にガーベラの花を手にクローゼアの方角を眺めて、誰のことを憂いていたのか。
「そうか、君が」
"イザベラ"。王女の責務に縛りつけるその名を背負い、単身で命の保証がされない敗戦国に渡った彼女。
彼女の全てを賭して、それほどまでに彼女が守りたかったもの。
「本物、か」
ずっと分からなかった彼女の隠し事。
『"私"を見つけて、暴いてください。本当に私が欲しいなら』
その答えは今、セルヴィスの目の前に存在した。
「イザベラ様、長らくのお勤め本当にお疲れ様でした」
そう言ってイザベラを労う。
「セルヴィス様がイザベラ様を勝手に単身でクローゼアに送り出した時は正直この鬼畜ヤロウなんて思いましたが、あのクローゼア王を説き伏せられるなんて流石です!」
今回の城内戦でほとんど負傷者を出さずに済んだのはイザベラの采配によるところが大きい。
クローゼア王から全権代理を得たと手紙を寄越したイザベラからもたらされた情報。
それはハリス大公を捕えるのに大いに役立った。
毒への耐性が強過ぎることや自身の身を顧みない危うさから彼女は母国であまりいい扱いを受けていなかったのではないかと、セルヴィスから話を聞いていたオスカーはクローゼアに渡った彼女を心配していたが、杞憂だったようだ。
本当に良かったとにこやかに笑うオスカーを横目にセルヴィスはスッと剣を抜く。
「って、セルヴィス様、何剣抜いてるんですか!! だって、本当のことじゃないですか!? いつもいつも勝手ばかりして!! 私も怒ってるんですからね! というわけで剣を下げて」
「誰だ、お前は」
鋭い眼光と共に剣の切先が向けられたのはオスカーではなく、そこに佇むイザベラだった。
「セルヴィス様、何を」
柔らかい蜂蜜色の髪にクローゼア王家特有の天色の瞳。紛う事なく、そこにいるのはイザベラだ。
だというのに、オスカーの静止を聞かずセルヴィスは彼女を睨みつけたまま、
「答えろ。イザベラをどこにやった」
冷たく、威圧的に再度目の前にいる彼女にそう問うた。
涼しい顔で佇んでいた彼女は、
「ふっ、あはははっ……あーおっかしい! こんなにあっさり見破られたのは初めてよ!」
親でも見分けられないのにと、腹を抱えて笑い出す。
剣を向けられている状況で何がそんなに楽しいのかは理解しかねるが、取り澄ました顔よりも笑った顔の方がより彼女に近い気がした。
「でも残念、私は間違いなく第一王女イザベラ・カルーテ・ロンドラインよ」
ひとしきり笑ったあと、そう告げた彼女は、
「私の最愛の妹を丁重に扱ってくださったこと、心より感謝いたします」
ふわりと微笑み綺麗なカーテシーをしてみせた。
それは記憶の中の彼女と寸分違わぬ所作であった。
パチリ、パチリとセルヴィスの中で急速にピースが組み上がる。
『そう! そうなのっ!!』
契約妃の話をした日、何故あんなにも暴君王女の手柄を褒められて喜んだのか。
『……沢山、食べさせてあげたかった、な』
カルディアで彼女が誰を思いそうつぶやいたのか。
『……元気、かしら?』
ひとりぼっちの夜にガーベラの花を手にクローゼアの方角を眺めて、誰のことを憂いていたのか。
「そうか、君が」
"イザベラ"。王女の責務に縛りつけるその名を背負い、単身で命の保証がされない敗戦国に渡った彼女。
彼女の全てを賭して、それほどまでに彼女が守りたかったもの。
「本物、か」
ずっと分からなかった彼女の隠し事。
『"私"を見つけて、暴いてください。本当に私が欲しいなら』
その答えは今、セルヴィスの目の前に存在した。